4.排卵の予測
排卵日検査法 (卵胞計測、血液検査、尿中LH検査、基礎体温)
排卵の予測には卵胞発育を直接評価して予測する方法と、卵胞発育により影響を受ける因子から間接的に予測する方法がある。前者は卵胞モニタリングや血中estradiol測定であり、後者は基礎体温、頸管粘液検査、尿中・血中Luteinizing hormone (LH)測定と分類されている1)。
日常診療では項目を併用し総合的に判断している。
卵胞モニタリング
経腟超音波検査により矢状断で描出される最大径と、それに直交する方向の最大径の平均値を卵胞径とする1)。月経周期3日目の卵巣では直径2~5mm程のantral follicleが観察され2)、月経8日目には10㎜に達する3)。一日2mmずつ卵胞径が増大し、排卵前日には約22mmに達する1)。
血中estradiol値
エストロゲンの血中 濃度が200~300pg/ml以上で2~3日間持続するとLHサージが生じる4)5)。一般的には排卵期のestradiol値は150~400pg/mlとされている6)。
基礎体温
基礎体温は睡眠時間、睡眠環境、前日の生活環境、アルコール摂取の有無、季節や環境温度変化などの様々な因子に影響を受けるが7)、心身ともに安静な状態で測定した体温として朝覚醒時に口腔内で測定する。排卵後の黄体期には+0.3度以上となる1)。体温上昇に必要な血中progesteron濃度は3~5ng/mlである1)。排卵日の推定には体温陥落日、低温相最終日、高温相初日などあるが基礎体温と排卵日の関連性を調べた報告によると排卵日との一致率は体温欠落日が28.4%、低温相最終日が62.5%と結論づけている8)。従って現在では排卵日を予測するために基礎体温を利用する機会は減少している。
頸管粘液検査
排卵期になるとestradiolの働きによって頸管粘液の分泌が亢進し、性状変化を認める。排卵期の粘液ではツベルクリン注射器を用いて、量が0.3ml以上、水溶性の粘液、牽引性9~10cm、弱アルカリ性(pH 7.0~8.5)であることが観察されるが、排卵日を正確に予測することは困難である9)。
尿中血中LH検査
正常成熟女性における排卵期の血中LH値は40~100mIU/mlである6)。血中LHサージの持続時間は約48時間、ピークの持続時間は約14時間で、血中LHサージ開始から34~36時間、血中LHサージのピークからは10~12時間で排卵する1)。血中LHサージと尿中LHサージまでの遅延わずか数時間であるため、尿検査にて簡便に排卵予測が可能である10)。尿中LH検出は抗LH monoclonal antibodyを用いた Immunochromatography法による判定量法で行い、尿中LHが20 mIU/ml以上がサージ開始であり、カットオフ値は40mIU/mlに設定されている1)。月経予定日の17日前から連日測定し最も発色した日を陽性と判断する。検査陽性から2日以内に排卵を認める確率は91.1%と報告されている11)。
1)生殖医療の必修知識 2013年
2)Gougeon A. Regulation of ovarian follicular development in primates: facts and hypotheses. Endocr Rev 1996 ;17:121-155
3)Ritchie WG. Sonographic evaluation of normal and induced ovulation.
Radiology 1986;161:1-10.
4)Ajduk A1, Małagocki A, Maleszewski M. Cytoplasmic maturation of mammalian oocytes: development of a mechanism responsible for sperm-induced Ca2+ oscillations.
Ajduk A, et al. Reprod Biol. 2008; 8:3-22
5) Brevini TA1, Cillo F, Antonini S, Gandolfi F. Cytoplasmic remodelling and the acquisition of developmental competence in pig oocytes. Brevini TA, et al. Anim Reprod Sci. 2007; 98:23-38.
6)星 和彦 不妊症の検査と診断. 佐藤和雄、藤本征一郎(編)。臨床エビデンス婦人科学 東京;メジカルレビュー社 2003;186-195
7)Kawamura M1, Ezawa M, Onodera T, Nagashima T, Toyooka R, Yagishita M. Frequency of rate of body temperature chart at mid cycle in pregnant women and the subsequent effect on pregnancy. Clin Exp Obstet Gynecol 2008;35:45-47.
8)千石一雄、石川睦男、浅川竹仁 基礎体温法による排卵および排卵日診断における正確性に関する検討 日不妊会誌 1985; 35:219-223
9)産科婦人科学科 研修コーナー 2007;59:N-31 日本産科婦人科学会誌
10)河野哲郎、松浦講平、本田律生、西村 弘、田中信幸、岡村 均 尿中LHサージからみた排卵予測 日内分泌会誌 1992;68:1188-1196
11)Behre HM1, Kuhlage J, Gassner C, Sonntag B, Schem C, Schneider HP, Nieschlag E. Prediction of ovulation by urinary hormone measurements with the home use ClearPlan Fertility Monitor: comparison with transvaginal ultrasound scans and serum hormone measurements. Hum Reprod 2000;15:2478-2482.