42.ジャンプアップ18(切迫早産の真実)

 切迫早産を侮(あなど)ってはならない。搬送を受け入れる側の私たちは、こんなケースにしばしば遭遇する(図説CTGテキスト アドバンス,メジカルビュー社から引用)。

1.対応してください(図1)

 近隣のクリニックから搬送依頼の連絡がきた。33週の切迫早産で、子宮口は1cm開大、未破水とのことであった。子宮収縮があり子宮収縮抑制薬の点滴を開始したとの情報があった。
 外来を通さず直接病棟に搬送され、内診後、装着したCTGである。内診所見は前医と同様であった。

 母体搬送を受入れる施設ではよくあるケースである。こうした場合、妊娠週数にもよるが、行うべき検査は以下の通りである。

  • 内診(分泌物の性状、破水の有無、子宮口の形状)
  • 超音波検査(頸管性状の観察、胎児発育評価)
  • 胎児心拍数モニタリング(子宮収縮、NRFSの有無)
  • 諸検査(分泌物培養、フィブロネクチン、エラスターゼ、血算、CRPなど)

 CTGは前半頻脈で、一過性頻脈はないが、基線細変動は正常範囲である。私の施設では、妊娠の継続を断念するべき状況(感染、抑制困難など)では当然だが、そうではない状態でも子宮収縮薬の必要性を検討している。胎児頻脈は、母体の動悸、高血糖、低カリウム血症、顆粒球減少症、横紋筋融解症、肺水腫などと同様、明らかな塩酸リトドリンの副作用である。有意な一過性変動や子宮収縮認めず、(↑)の時点で子宮収縮抑制薬は中断された。

2.顕れる真実(図2)

 子宮収縮抑制薬中止20分後のCTGである。
 判読してください。

3.判読結果と対応(図3)

 心拍数基線は155bpmで、基線細変動は6-7bpm、軽度遅発一過性徐脈が繰り返し出現している(レベル3)。心拍数が最下点に到達するまでの時間は30秒未満だが、uniformな波形が繰り返し出現し、左右対称で、遅発一過性徐脈と判読できる。
 急速遂娩の準備もさることながら、原因検索のため超音波検査を行いたい。探すのは、切迫早産に隠れたあの疾患である。

4.超音波検査所見(図4)

 経腹超音波では、子宮前壁、腹壁直下に胎盤を認める。胎盤の幅は67mmに肥厚し、内部に不規則なエコー像を認める。(超音波検査では胎盤の厚みが55mm以上で肥厚と判断する)血腫による胎盤肥厚で常位胎盤早期剥離と診断し、緊急帝王切開が行われた。

5.切迫早産を見たら(図5)

 結果、2010g、女児、アプガースコアー1分6点、5分9点、pH 7.153の健児を得た。胎盤母体面の1/3に凝血塊が、付着している立派な常位胎盤早期剥離であった。
 搬送受け入れ施設で働いていると、時々遭遇するケースで、子宮収縮の出現とともに低酸素ストレスが顕著になったものだ。
 切迫早産をみたら、一度は常位胎盤早期剥離を疑っていただきたい。