43.ジャンプアップ19(急変するCTG-2)

少し派手なCTGをご覧いただく(図説CTGテキスト アドバンス,メジカルビュー社から引用)。このCTGは、35年以上に及ぶこれまでの私のキャリアの中で、見たことがなかった貴重なものである。

1.判読してください(図1)

 36歳、1妊0産。妊娠39週、全開大で続発性微弱陣痛となりオキシトシンを使用している。
 当院では院内助産を行っており、このケースは助産師が管理していた。全開大後2時間を経過し、陣痛が弱く、進行がないため、ドクターコールされた。立ち会った医師は、続発性微弱陣痛と判断し、オキシトシンの点滴を開始している。
 オキシトシン開始後30分のCTGである。
 判読し、問題点をあげて下さい。

2.判読と対応(図2)

 これはスタートアップ8(特殊な圧変化)で示したCTGである。
 心拍数基線は140bpmで、基線細変動は前半少なめで、後半は正常範囲にある。一過性頻脈はなく、一過性徐脈が出現している。30秒未満の経過だが、比較的緩やかに心拍数が減少している。子宮収縮最強点と心拍数減少の最下点が一致し(ミラー像とも呼ばれる)、波形は典型的な早発一過性徐脈である。

 子宮収縮はどうであろう。

 10分間に6回程度の子宮収縮が観察される。NICHDのガイドラインが規定する頻回収縮(tachysystole)である(30分間の平均で、10分間に5回より多い子宮収縮を頻回収縮と呼ぶ)。ガイドライン上、頻回収縮であっても自然陣痛と誘発、一過性徐脈の有無で対応は異なるとされる。

 このケースでは子宮収縮薬が使用されていた。産婦人科診療ガイドライン産科編では、子宮収縮薬の使用方法を厳格に規定している(2017年版p304-316参照)。中で、tachysystoleが出現した際は、状態を確認し必要に応じ、減量、あるいは中止を検討するよう示されている。
 さて、このケースはどうであろう。確かに収縮回数は規定を上回り、頻回収縮(tachysystole)だが、陣痛は短く、またさほど強くはなかったようである。
 どうしたものであろう、、、。

3.引き続くCTG(図3)

 子癇発作のみならず、てんかん発作など母体の意識消失発作、あるいはショック状態は子宮内に低酸素状態をもたらす。子癇発作中に記録されたこのCTGはその明確な根拠となる(ジャンプアップ9(宿題D―意外な顛末)参照)。
 オキシトシンの適応、用量は正しく、実際の痛みは強くない。しかし、結果が悪ければ、頻回収縮にオキシトシンを継続している点は責めを受けても反論できない。
 頻回収縮、ぜひ、記憶に留めて頂きたい。