45.ジャンプアップ21(分娩第2期-1)

分娩直前、CTGは様々な姿を見せる。今回からは分娩第2期以降のCTGをご覧いただく。いずれも図説CTGテキスト アドバンス,メジカルビュー社からの引用である。

1.経産婦なのに緩やかに進行する分娩第2期のCTG(図1)

 29歳、2妊1産。妊娠40週、前期破水で入院後、陣痛発来したケースである。妊婦健診で推定児体重3800gと記録されている。内診により全開大を確認後、再装着したCTGだが、一過性徐脈が頻発している。何が起こっているのか説明し、対応できるか?

2.分娩56分前から16分前までのCTG判読と経過(図2)

 CTGの判読だが、胎児心拍数基線は135-140bpm、基線細変動10-15bpm、一過性徐脈(↓)が頻発している。(↓)は子宮収縮に同期し、早発一過性徐脈と判読することが妥当だ(レベル2)。
 早発一過性徐脈は脳血管の圧迫によるが、頭蓋骨下の硬膜には副交感神経が多く分布し、その神経叢が直接刺激され迷走神経反射が引き起こされる場合もあるとされる。
 副交感神経叢の刺激によるものでは、心拍数の低下は変動一過性徐脈の特徴を持つ。実際、(↓)の半数は30秒未満の経過で急速に心拍数が低下し、変動一過性徐脈(レベル2)と判読することも出来る。
 唯一、波形(A)の一過性徐脈はわずかに遷延し、その後、心拍数基線と細変動の増加が認められ、胎児に低酸素負荷がかかっていた可能性がある。いずれにしろ、16分前までのCTG所見にほぼ問題はない。
 経産婦なのに、分娩の進行が少し緩やかだが、その理由、思い当たるか?

3.分娩16分前から分娩までのCTG判読と反省点(図3)

 波形(B)は急速に心拍数が低下し、その後の軽度遷延一過性徐脈(レベル3)も同様の圧変化と推察される。回復後の心拍数基線と細変動(C)は正常に保たれ、おそらく児頭の圧迫による副交感神経叢刺激がもたらした遷延一過性徐脈で、有害な徐脈(低酸素負荷)ではないと推察される。

 分娩第2期遷延にはあたらないが、児頭娩出後、肩甲難産となり出生に4分間を要した。児は、4220g、男児、アプガースコアー1分7点、5分8点、pH 7.211で健常であった。pH がわずかに低値であったことは、肩甲難産によると考える。児頭娩出後、肩甲が娩出せず、マックロバーツ体位がとられ子宮底圧迫により出産した。  ちなみに波形(D)は母体心拍である。

 カンファレンスでは、現場が経過観察した判断は概ね妥当で、異論はなかった。一方で、巨大児であることを事前に評価できなかったことは、問題点として指摘された。ただし、経験的には、3500gを超えると、超音波による推定体重の誤差が大きくなり、事前の評価が難しくなる印象がある。
 また、前回の分娩記録を調べると出生体重が3910gで分娩時間も遷延していた。巨大児は反復リスクがあり、その確認がなかったことは反省点としてここに記録しておきたい。