9.タイミング

タイミング療法

1.タイミング療法の妊娠率(図1)
原因不明の不妊症患者において、タイミング療法による月経周期あたりの妊娠率は当初はおよそ5%であるが、累積妊娠率は経過観察6ヶ月でおよそ50%、24ヶ月ではおよそ60%と横ばいとなる1)。そのため、およそ1年をめどに次の治療のステップに移行を勧めた方が望ましいとされる2)。

図1.原因不明不妊における治療別の累積妊娠率(n=437)

M. Brandes et al., Hum reprod 2011

2.タイミングの時期と妊娠率(図2)
タイミング療法における適切な性行為の時期は、排卵6日以前と排卵翌日以降では妊娠率は0となり、排卵の1~2日前が最も妊娠率が高い事をしめしている3)。

図2.排卵日とタイミング時期の妊娠率(n=221)

●:全体の妊娠率 ○:臨床的妊娠率 Wilcox AJ et al., Hum reprod 1998

3.自然妊娠に及ぼす影響4)
米国生殖医学会では自然妊娠を目指すための要点を下記のように述べている。
妊娠しやすい時期は、排卵4日前より排卵前日であり頸管粘液の状態も関係する。この時期に1〜2日おきの性交が妊娠しやすい。
特定の日のみの性交および、体位や性交後の安静は妊娠に影響しない。
タイミングを頻回に取れない場合は、排卵日を推定する事は有益である。
タバコ(受動喫煙でも同様)や適量以上のアルコール(1L以上)やカフェイン(コーヒー2.5杯以上)の摂取は妊孕性に影響する。
BMI19以下の痩せやBMI35以上肥満では妊娠までの期間が長くなる。
年令との関係では(図3)、女性は、35歳以上は有意に妊娠率が低下するので、タイミング療法を6ヶ月間試みても妊娠に至らない場合は専門家の受診を考慮するべきである。一方、男性に関しては(男性因子は除く)、50歳未満であれば、妊孕性に影響はしないと考えられる。

図3.時代毎の妊娠率と女性の年令

Practice Committee of ASRM Fertil Steril. 2013

参考文献
1) Brandes M, Hamilton CJ, van der Steen JO, de Bruin JP, Bots RS, Nelen WL, Kremer JA. Unexplained infertility: overall ongoing pregnancy rate and mode of conception. Hum Reprod. 2011;360-366
2) 生殖医療の必修知識 2013
3) Wilcox AJ, Weinberg CR, Baird DD. Post-ovulatory ageing of the human oocyte and embryo failure. Hum Reprod. 1998;394-397
4) Practice Committee of American Society for Reproductive Medicine in collaboration with Society for Reproductive Endocrinology and Infertility. Fertil Steril. 2013;100:631-637.