序
「研修ノート」は,昭和49 年にNo. 1 が発刊されて以来44 年目にして節目と言えるNo. 100 を発刊する運びとなった.日本産婦人科医会では,日常の診療に役立つようなテーマを選んで毎年研修ノートを作成し,多くの医会会員はもとより,初期・後期研修医,若い産婦人科専攻医師から専門医,さらには指導医の診療レベル向上を目指し,各世代の女性の様々な疾病に対する実践診療のために必要な良質で最新の医療情報を提供してきた.しかし,今回の研修ノートNo. 100 は記念号としてふさわしい大変興味深いテーマを,という趣旨からNo. 100,No. 101 の2号にわたり「近未来」について話をいただくこととした.No. 100 では「産婦人科医療の近未来」と題し,産婦人科領域からは近未来の生殖医療,近未来の周産期医療,遺伝子治療,近未来の女性医療医学について,また産婦人科学以外の分野の先生方からはロボット,人工知能と医療,グローバル化世界の感染症といったご専門の「近未来」について自由に語っていただいた.
いずれも今までのような診断,治療を勉強するといったスタイルの固いイメージの研修ノートとは一線を画し,まるでエッセイを読んでいるかのような楽しい内容に仕上がっている.ロボットといえば海外では多くの手術が腹腔鏡下手術にとって代わりロボット支援下手術となりつつあり,やっと日本でも一部の病院で行われるようになってきたが,われわれ産婦人科にはあまりなじみのないロボットによるリハビリテーションが既に保険収載されているという.このようにロボットが医療界に果たす役割はどんどん大きくなってきている.「近未来」は,比較的近い未来の時代を指し,小説や映画,アニメーション,漫画などフィクションの分野では空想世界として語られることが多いが「鉄腕アトム」はもはや空想ではなく実現可能なAI ロボットである.近未来ではAI ロボットが分娩や手術の担い手となり,現在の産婦人科医不足を解消してくれているかもしれない.
最後に貴重な時間を割いて執筆にあたっていただいた諸先生方には深甚なる謝意を表したい.また,執筆・校正・編集などにご尽力いただいた研修委員会の木村正委員長,小林康祐・髙井泰副委員長ならびに委員,担当理事,幹事の諸君に深く感謝する次第である.
平成30 年1 月 会長 木下勝之