現在がんサバイバーが 500 万人を超え,がん医療が入院だけではなく外来へシフトしていく中で,一般外来診療におけるサポーティブケアの拡充も必要となる.さらに治療成績の向上に伴い,女性のがんサポーティブケアとして,妊孕能にも配慮しなければならない.

 がんサポーティブケアとは,がんに伴う症状,がん治療に伴う有害事象のマネジメントと治療である.がんの診断から治療,治療後のケア,さらには終末期ケアまでの過程を通して,身体的および精神心理的な症状や副作用のマネジメントを含む.これまで日本のがん医療はがんの予防や手術・化学療法・放射線治療などの治療を中心に考えられてきた.近年は治療成績の向上に伴い,がん患者は,手術の合併症や化学療法・放射線療法などの副作用や治療後の後遺症によりその後の QOL にかかわる様々な問題を生じるようになり,さらには社会復帰に支障を来すケースも増えてきた.すなわちこれからのがん患者に対しては,治療後の妊孕能温存,リハビリテーション,栄養管理,口腔ケア,心のケア,症状緩和,社会復帰支援など,多面的かつ包括的に実施するサポーティブケアがますます重要になると考えられる.

 そこで,このたびのテーマである「女性のがんサポーティブケア」では,現時点でのエビデンスを基に,担がん患者の治療・ケアを解説することで,会員の皆様の日常診療に役立つような内容としてもらった.

 発刊にあたり貴重な時間を割いて執筆いただいた諸先生方には心より御礼申し上げる.また執筆・校正・編集などに尽力された研修委員会委員並びに医会 学術部・研修部会の担当役員・幹事に感謝する.

 

令和 2 年 11 月 
会長 木下勝之