編 集 後 記
取り扱い規約やガイドラインに共通していえることですが,新しい考え方が定着するには時間を要します.2020 年(2021 年)の東京五輪前には,盛んにグローバルスタンダードと叫ばれていました.今も変わらないと思います.グローバルスタンダードに合わせることが求められています.まさに本分類もその1つであるといえます.妊娠高血圧症候群がPIH からHDP になり,診断基準も改訂され,国際標準とマッチングされました.これらは,どうしても現場の混乱を招きますが,悪いことばかりではありません.明確なアルゴリズムが示されたことで,診断の効率化が図れることが期待されるからです.
個人的には,本分類の斬新さは,血液疾患を鑑別に挙げていることだと思います.難治性の鼻出血を契機に,血液凝固疾患が発見されることは知られていますが,性器出血も同じであることは目から鱗でした.産婦人科医としては,どうしても組織学や内分泌要因ばかりを考えがちです.私自身もAUB を契機にvon Willebrand 因子を測定し,低下を認めた症例を経験したことがあります.産婦人科は本来,女性の総合的診療ができる素晴らしい診療科であると考えています.コンピューター企業のIBM で100 年以上前から受け継がれている社是に,「THINK(考えよ)」があります.これは,「我々は考えることをやめてはいけない.それをやめることで,トラブルに陥るからだ.(略)」という趣旨です.新しい考え方を導入するにあたって,盲従するのではなく,原理をよく考えて用いることが大切です.本書がその一助になれば幸いです.
最後になりますが,本書の執筆に貴重な時間を割いていただいた著者の先生方,編集・校正に尽力していただいた研修委員会の先生方や事務局の皆様に深謝申し上げます.
(幹事 森本恵爾 記)