(1)「安全な妊娠中絶」に関するWHO の考え方
・「 安全な妊娠中絶」とは,安全に妊娠を終了させることと同時に,中絶手技による合併症の予防,中絶後の避妊法の提供といった保健医療サービスを包括した概念である.
・「 安全な妊娠中絶」は,望まない出産や育児,中絶による心身の健康上のトラブル,妊産婦死亡などの減少させるために必要不可欠である.避妊は「安全な中絶」に必須であるが,上記の公衆衛生学的問題の解決策として十分でない.
・ WHO によると,「避妊したい女性の 3 分の2 が,副作用を恐れて,また妊娠の可能性を過小評価して避妊薬の使用をやめ,これにより 4 分の1 が意図しない妊娠に至っている」という.意図しない妊娠は重要な問題であり,多数の安全でない中絶と妊産婦死亡が発生する原因ともなっている.
・ WHO ガイドラインSafe Abortion:technical and policy guidance for health systems second edition 2012 では,妊娠 12~ 14 週まで(≑ 妊娠第 1 三半期)の機械的人工妊娠中絶の際には吸引法(VA:vacuum aspiration)を“強く推奨”している(注:本邦では,妊娠 12 週を超えた週数での機械的人工妊娠中絶は勧められていない).本邦でも,従来からの電動式吸引法に加えて,ディスポーザブル手動吸引器(MVA:manual vacuum aspiration)が 2016 年から発売されている.