(1)体重減少性無月経

1 )体重減少について

・ FAT では,極端な食事制限によって体重が減少して生じる無月経が問題とされ,陸上長距離や審美系競技など低体重が求められる競技では頻度が高いと報告されている.
・ 2007 年からは,体重に関係なく,「利用可能なエネルギーの不足(LEA:low energy availability)」となっている.摂食によるエネルギーの獲得量と運動による消費エネルギー量のバランスが問われるようになり,「相対的エネルギー不足(RED-S:relative energy deficiency in sports)」として月経機能や骨代謝以外にも影響を与える因子として広く男性競技者も影響する問題となっている(図29).

・ これまでは体脂肪率が低いことが問題とされてきたが,利用可能エネルギー(EA)の計算式(表40)では体重から体脂肪を除いた「除脂肪体重(LBM:lean body mass)」1㎏あたりで判断される.

・ これが基礎代謝量相当の30kcal/日以下の場合をLEA とし,少なくとも45kcal/日以上が望まれるとされている.EA を算出するためには食事から得られたエネルギー量を計算して,運動による消費エネルギー量を測る必要があるが,日々異なる状況を把握するのは困難である.介入に関しても減少した体重減少を元に戻し,標準体重の90%以上を目指すとされている.しかしながら最低2,000kcal /日以上の摂取の推奨と 1 日あたりの摂取を300~600kcal 増加させると一律の介入しか示されていない.
・ 思春期では同じ学年でも体格が大きく異なるため,年齢別の摂取エネルギー基準でなく,LBM の変化で判断することが提案されている.体重は減少しなくても骨格筋量が増えてLBM が増加すると必要とされるエネルギーが増えてLEA を呈する可能性がある.LBM 1㎏増加すると運動の程度が身体活動レベル2.0 に相当する場合,基礎代謝量の約2 倍の,おにぎり 3 分の 1 個分に相当する60kcal を毎日増加させないとLEA に陥ることになる.LBM は高価な体組成測定機器を使用しなくても,体脂肪率が測定できる体重計があれば計算できる(表40).アスリートは体脂肪率や体脂肪を含む体重でなく,LBM で管理する.

2 )無月経に関して

・ 目的はスポーツ障害の予防で,無月経を治すことではない.
・ 脳が LEA と認識しているか「視床下部性」かを判断する.本邦では黄体化ホルモン(LH)3.0mIU/mL を基準としている.LH 低下は蛋白同化を担うテストステロンの低下を意味するため,総テストステロン値20ng/dL(0.2ng/mL)以下になると蛋白合成が低下してスポーツ障害の治癒が遅延する(図30).