(1)子宮内膜要因

・子宮腺筋症の定義の始まりは1972 年Bird らにより“肥厚した筋層内に内膜が良性の浸潤を生じたもの”と表現されたこととされている.
・当時の診断手段は術後病理診断に依存していたが,超音波診断を経て1980 年代にはMRI による術前診断が可能になった.
・超音波・MRI などの非侵襲的診断の進歩により,子宮腺筋症の発生個所は子宮内膜に接する内側筋層のみならず,外側筋層にも発生することが知られるようになり,発生原因に関し多様な議論が必要となってきた.
・現在に至るまで子宮腺筋症の自然史,発生原因は明らかにされていないが,以下のような仮説が提唱されている.
・子宮内膜掻爬術や,妊娠による絨毛組織形成による内膜の侵襲が子宮腺筋症発生に関与すると考えられてきたが,明確な統計的根拠は得られていない.
・類似疾患である子宮内膜症の病巣組織は,正常子宮内膜組織と比較して浸潤性が強いとの報告があるが,子宮腺筋症の病巣組織の性格は不明である.
・近年,子宮腺筋症病巣の間質細胞は,子宮腺筋症病巣由来の平滑筋細胞の存在下で強い浸潤性を示すとの報告があり,間質細胞と平滑筋細胞の両方が本症発生に関与する可能性が示唆されている.