ポイント
- 妊婦のほとんどが妊娠初期に子宮頸部細胞診が行われ,この時に子宮頸癌が発見されることが多い.妊娠中の進行子宮頸癌に対しての方針決定には,妊娠週数,進行期,リンパ節転移の有無,組織型などを加味した上で,患者や家族の意向を踏まえ症例ごとに検討する必要がある.
1)子宮頸癌合併妊娠の病態
- わが国では近年,子宮頸癌罹患の若年化と晩婚化・晩産化により,妊娠年齢と子宮頸癌発症年齢のピークが重なる傾向にある.このため,妊娠中の子宮頸部細胞診異常はしばしば経験され,また妊娠中のスクリーニング細胞診を契機に子宮頸癌と診断されることも少なくない3).
2)診断の手順
- 初期の子宮頸癌は無症状であることが多く,妊娠初期検査として子宮頸部細胞診が含まれている現在では妊娠が初期子宮頸癌発見の契機ともなっている.
①子宮頸部病変の診断
- 細胞診でスクリーニングを行い,異常があればコルポスコピーと組織生検を行う.
- 組織診の結果によっては子宮頸部円錐切除術へと診断を進めていくのが一般的である.
②高次施設へのコンサルティング
- 妊娠合併症例ではスクリーニング陽性の段階で細胞診,コルポスコピー,組織診が行える施設でのコンサルティングが望ましい.一次施設では,各地域の状況を鑑み,高次施設と連携をとりながら対応を検討する.
3)実際の管理(図11)
①生検組織がCIN3以下の場合
- 細胞診とコルポスコピー所見が一致している場合は,妊娠中に円錐切除術を行わず,経過観察を行い,分娩後に再評価を行う.
②生検組織がAISの場合
③IA期が疑われる場合
④IB1期以上の浸潤癌の場合
- 胎児の子宮外生存が可能な妊娠週数に診断された場合には,胎児娩出後に根治療法を行うことを勧めるが,子宮外生存が不可能な妊娠週数に診断された場合には,症例によっては待機的に根治療法を行うことを提案する.Ⅱ期以上の進行症例については速やかに妊娠を終了し標準治療を行うことを提案する.
4)妊娠中の化学療法について
- 海外のガイドラインなどでは,妊娠22週以前に診断されたIB2からⅡ期症例,妊娠22週以降に診断されたIB1からⅡ期症例に対し,妊娠を継続したままで化学療法を行い,妊娠週数を延長する方法が選択肢として挙げられている3).
文献
- 3)日本婦人科腫瘍学会編.子宮頸癌治療ガイドライン2022年版,第7章 妊娠合併子宮頸癌の治療.東京,金原出版.2022