(2)分類

1 )発生部位と病変

・子宮内膜症の発生部位としてはダグラス窩周辺が最も多く(表1),活動性の初期病変の大部分はこの部位に認められる.
・子宮内膜症組織は正所性内膜と同じレベルではないが,性ホルモンに反応して月経様出血を起こす.その結果,内膜症病変は新旧血液を含んだ大小の血性囊胞を形成する.血液成分の二次変化により壊死組織成分を含んだ凝固血液やヘモジデリン沈着がみられる.

・子宮内膜症の病変は,身体のほとんどの部位に認めることができるが,表1 の好発部位以外にできたものは稀少部位子宮内膜症とよばれている.
・子宮内膜症の病変としては,腹膜病変,卵巣チョコレート囊胞,DIE などがある.

①腹膜病変

数㎜径の透明,赤色あるいは青黒色の結節(blueberry spot)が主体(図1)

②卵巣チョコレート囊胞

卵巣に発生した内膜症性囊胞は,血液貯留に伴って破裂・重積を繰り返し徐々に増大(図2).血液成分による刺激によって周囲組織との癒着が形成され,病変周囲は線維化・器質化を起こし硬結となる.

③ DIE

腹膜表面から5㎜以上浸潤した病変と定義されているが,一般には,直腸やS 状結腸,直腸腟中隔,膀胱子宮窩に瘤状の腺筋症様病巣を呈す.


2 )稀少部位子宮内膜症(39 頁(5)稀少部位子宮内膜症の取り扱い参照)

・胸腔,尿管・膀胱,腸管および臍などの性器外で比較的稀な場所にできる内膜症.
 腸管と尿路系に多いが,肺,神経,副腎,皮膚,角膜などの報告がある.
・子宮内膜症患者の1~12 %にみられるといわれ,骨盤内の子宮内膜症を伴わない場合もある.

3 )進行期分類

① Beecham 分類

・内診所見にもとづいた子宮内膜症の古典的な分類.腹腔鏡検査が普及するまでは本分類が主流であった(表2).

② R-ASRM 分類

・1979 年に米国不妊学会(AFS:American Fertility Society)は,新しい分類を提唱した.その後1985 年に改訂され,1996 年に学会名がASRM(American Society for Reproductive Medicine)に変わった際に現在の版になった.
・子宮内膜症病変の大きさと癒着の範囲によって点数を加算して合計点を算出し,Ⅰ期からⅣ期の進行期に分類する(表3).
・腹膜病変は,色調によってRed(Red, Red-pink, Clear),Black(Black, Blue),White(White, Yellow-Brown, Peritoneal defect)に分けて,それぞれの占める割合を百分率(%)で表す(図3).
 ブルーベリースポットなどの最も古典的な腹膜病変はblack lesion とよばれ,ヘモジデリンの色素沈着の結果である.red lesion はblack lesion に至る前の活動性の高い病変で,ブレブとよばれる透明な水疱状の病変が主である.white lesion は活動性の低い線維化を主体とした病変で,黄色から茶色がかった病変や,腹膜欠損(pocket formation)なども含まれる.
・R-ASRM 分類は世界的に最も用いられている分類法であり,ほぼすべての臨床研究には本文類が用いられて世界標準となっている.しかし,深部子宮内膜症や痛みの評価がなく,また本分類による進行期と不妊の予後が関連しないとの指摘もある.


③ Enzian 分類

・Enzian 分類は,R-ASRM 分類では取り上げられていないDIE の評価を目的として開発された.
・DIE の周囲臓器に浸潤するという腫瘍性性格を考慮して,子宮頸癌のTNM 分類をモデルとして考案された.
・基本的には,ダグラス窩の病変をA:直腸腟部,B:仙骨子宮靱帯,C:直腸内膜症の部位別に分けて,さらに大きさ(<1㎝,1~3㎝,<3㎝)で細分化する.また,F(far)として腺筋症や膀胱内膜症も記述できる.

④ EFI

・2010 年に提唱されたEFI (図4)は,妊娠予後評価に優れ,術後のART プランを立てる際に有用である.
・スコアは0~10 点で評価され,0 点は予後が最も不良であり,10 点は最も良好と判断される.詳細は論文(Adamson GD, et al. Fertil Steril 2010 ; 94 : 1609 – 1615)参照.