(2)心血管系ケア
女性のがんで最も多い乳癌の長期サバイバーの死因として,生存期間が長くなればなるほど,全体の死亡に占める乳癌の割合が減少し,心血管疾患による死亡が多くなる.また,乳癌のみならず,肺癌,ホジキンリンパ腫,卵巣癌サバイバーでも,非がん対象者に比べて心血管疾患発症する割合が多い.がんサバイバーに於ける動脈硬化性心疾患発症を予防するために脂質異常症,高血圧症の管理は重要となる.
1 )脂質異常症の管理
①脂質異常症のスクリーニング
LDL-C はFriedwald 式または直接法で求める.TG が400㎎/dL を超える場合があれば,non-HDL-C を使えるようになっている(表24).
②絶対リスク評価
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017 年版では吹田スコアを用いて絶対リスクの評価を行う.絶対リスクの指標は10 年間の冠動脈疾患の発症確率である.冠動脈疾患の既往がなく,さらに糖尿病,慢性腎臓病,脳梗塞や末梢動脈疾患がない場合は,スコア計算したのち各リスクに分類される.吹田スコアが40 以下は低リスク,41~55 は中リスク,56 以上は高リスクに分類される(図37).
③リスク分類と脂質管理目標値の確認
リスク評価したあと管理区分に従い,目標とするLDL-C はいくらであるかを設定する(表25).
④脂質異常症の治療
基本的には生活習慣の改善を指導(体重増加の注意,減塩,運動励行)し,十分効果得られない場合はスタチンやフィブラート系薬で治療を開始する.
2 )高血圧症の管理
がんサバイバーでなくとも男女共に年齢とともに高血圧症の頻度は増加する.高血圧症は本態性高血圧と二次性高血圧に大きく分かれるが,本態性高血圧が全体の90 %を占めており,明らかな合併症を有しない患者の場合は,まず本態性高血圧症と考えて治療を開始する.
①心血管病リスク層別化
血圧を測定し高血圧症の1 度から3 度に分類する.さらに,65 歳以上か,喫煙,脂質異常症,肥満などの中から危険因子数を算定し,リスク層のどこに相当するかを検討し,血管病の低リスク,中等リスク,または高リスクに分類する(表26).
②高血圧管理計画
低リスク群,中リスク群であれば,生活習慣の改善を指導(体重増加の注意,減塩,運動励行)しつつ家庭血圧を測定してもらう.測定時間は,起床後の1 時間以内(排尿後,朝食前,朝の服薬前)と就寝前の2 回測定してもらう.
③降圧薬治療
指導にも関わらず高血圧を認める場合は,降圧薬を単剤,少量から開始する.一般的には,利尿薬,Ca 拮抗薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が第一選択薬として使いやすい(図38).