(2)本邦における人工妊娠中絶施行の際の注意点

・ 医会発行の研修ノートNo99「流産のすべて」に流産手術および人工妊娠中絶施行の実際および注意点を詳述している.医会HP(https://www.jaog.or.jp/notes/note8514/)で内容の閲覧が可能である.
・ 母体保護法に係る疑義について,公益社団法人日本医師会から厚生労働省子ども家庭局母子保健課長に対し,母体保護法第 14 条第 1 項第 2 号において,暴行若しくは脅迫によって妊娠したものについては,本人および配偶者の同意を得て,人工妊娠中絶を行うことができることとされているが,強制性交の加害者の同意を求める趣旨ではないと解してよいか,との照会(令和 2 年 8 月 24 日)に対し,厚生労働省子ども家庭局母子保健課長から,標記の件については,貴見のとおりであるとの回答(令和 2 年 8 月 28 日)がなされている.
・ この疑義照会を踏まえ,母体保護法施行時の留意点をまとめた「母体保護法の施行について」(平成 8 年 9 月 25 日厚生省発児第 122 号厚生事務次官通知)の一部が改正された(参考 2 下線部が変更点).

(参考1)
第 3 章 母性保護
(医師の認定による人工妊娠中絶)
第14条 都道府県の区域を単位として設立された社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という.)は,次の各号の一に該当する者に対して,本人及び配偶者の同意を得て,人工妊娠中絶を行うことができる.
一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
二 暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
2  前項の同意は,配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなったときには本人の同意だけで足りる.

(参考2)
3 人工妊娠中絶の対象
(1)略
(2) 法第 14 条第 1 項第 2 号の「暴行若しくは脅迫」とは,必ずしも有形的な暴力行為による場合だけをいうものではないこと.ただし,本号に該当しない者が,この規定により安易に人工妊娠中絶を行うことがないよう留意されたいこと.なお,本号と刑法の強制性交等罪の構成要件は,おおむねその範囲を同じくする.ただし,本号の場合は必ずしも姦淫者について強制性交等罪の成立することを必要とするものではないから,責任無能力等の理由でその者が処罰されない場合でも本号が適用される場合があること.