(2)症状(どのように見つかるか)

・ 先天性女性器異常の主たる臨床症状は,外性器形態異常,第 2 次性徴の遅延,月経血流出障害による腹痛,原発無月経,不妊・不育である.
・ 出生直後に発見されるのは外性器の形態異常である.例えば,外性器に男性化徴候(陰核肥大,陰唇肥大)が認められれば,高アンドロゲン血症が予測でき,副腎ステロイド産生系酵素異常症や卵精巣の存在が疑われる.その他,尿道の開口部,性腺の陰囊・陰唇への下降程度などを評価することになる.
・ 非典型的な外性器を有する新生児への対応の要点について以下にまとめる.

・ ただちに性分化疾患にかかわる医療者チームを招集する.本症は経験豊富な集学的チームによってケアされるべき疾患であり,積極的に高次施設へのコンサルトや転院を考慮する.
・ まず生命予後に直結する副腎皮質機能低下症の鑑別を行う.
・ 診察,血液・尿検査,染色体検査,ホルモン検査,家族歴などにより疾患を鑑別する.
・ チームは,診断,社会的性の割り当て,治療選択肢に関して患者家族に勧告を行う前に,臨床管理計画を作成する.最終的な治療指針の決定には家族も参加する.
・ 家族の混乱を避けるため,施設内で保護者への説明内容を統一する.説明者を決めることが望ましい.
・ 家族への心理的,社会的サポートを行う.
・ 新生児期に男性化を認める46, XX 性分化疾患の原因には,遺伝性疾患のほか,母体の男性ホルモン産生腫瘍が含まれる点に留意する.

・ 新生児期には,21-水酸化酵素欠損症が(女児の男性化が指摘されていなくとも)新生児マススクリーニングによって発見されることがある.
・ 小児期には,低身長の精査をきっかけにターナー女性が診断されることがある.
・ 性腺の分化異常を伴う女性患者では第 2 次性徴が遅延することになる.ミュラー管分化異常や月経流出路閉塞のみでは,性ホルモンの分泌は影響を受けないため,第 2 次性徴が通常どおりみられる.
・ 次いで,月経血の流出障害を引き起こす性器異常の場合は,思春期,すなわち通常初経を迎える 10~14 歳に周期的な腹痛症状を呈し,留血腫が認められることで発見される.子宮発生の有無や月経血流出路閉塞の診断には,経直腸超音波検査が有用であるが,MRI 検査もしばしば用いられる.月経血流出路障害を来す疾患としては,処女膜閉鎖,腟狭窄・閉鎖症,腟欠損症,子宮頸管狭窄症などが該当するが,月経血貯留を呈するのは機能性子宮が存在する場合に限られる.
・ さらに 16 歳を超えて遅発思春期,さらに原発無月経を主訴に婦人科で精査が開始されてはじめて,ターナー女性やアンドロゲン不応症などの染色体・遺伝子異常を伴う疾患が診断されることがある.子宮欠損も原発無月経を呈するので,この時期に診断されることが多い.
・ 婦人科健診時に偶然発見される性器異常もあり,例えば腟中隔,子宮奇形のうち双角子宮,重複子宮などである.腟中隔は性交時にパートナーから指摘されることもある.
・ 成育過程や日常生活において特に症状を来さない女性器異常のうち,双角子宮や中隔子宮は,不妊症や不育症などの精査中にはじめて指摘されることがある.