(3)病名の告知とカウンセリング
・ 疾患の管理を開始する上で留意すべき点は,患者・家族への説明内容および手順である.特に第2 次性徴遅延や原発無月経の精査中に発見・診断された性分化疾患の場合には重大な問題である.本人は思春期という不安定な時期にある上,成人と同様の理解力が期待できないこともあり,また性のアイデンティティというきわめて個人的でデリケートなテーマであることから,その告知には困難を伴う.
・ 原則は,患者本人を含めて医学的に正確な説明を,時間をかけて行うことである.しかし,最初に親にのみ説明すべきか,最初から本人を含めるべきかは,迷うところである.14~15 歳以降であれば,ほとんどの患者は十分理解可能であり,患者本人への説明を行わなかったことでかえってトラブルを生じることも多い.家族や医療者のサポートがない状態で,断片的な情報から自己診断に至る事態は避けるべきである.
・ 高ゴナドトロピン血症を伴う原発無月経の場合は,染色体異常の頻度は約15%であり,染色体検査を含めた遺伝学的検査が推奨されるが,実施にあたっては遺伝カウンセリングが必要である.患者の自発性を尊重すべき,というのが原則であるが,小児~思春期の場合など,難しい場合もある.また,結果の伝え方に注意が必要であり,秘匿したがために,後年医療不信に陥った例もある.
・ 遺伝学的異常が想定される疾患ではないミュラー管発生異常などの方が,患者本人への説明は容易であるものの,子宮欠損例の場合などは,思春期の患者に妊孕性の欠如について告知しなければならず,性分化疾患の場合と同様の十分な配慮が必要となる.