(2)Ovulation dysfunction:排卵異常

  • 年齢や原因によって管理方針が異なるため,年齢的に1)閉経移行期と2)思春期,原因として3)多囊胞性卵巣症候群と4)内分泌代謝異常の4つに分けて解説をする.

1 )閉経移行期におけるAUB とその対応

ポイント

  • 閉経移行期にはAUB-O が多い.
  • 閉経移行期であっても悪性疾患を含む器質性要因(PALM)との鑑別は重要である.
  • 年齢やAUB の状況により管理内容を検討する.

①閉経移行期とは

  • 閉経移行期とは,生殖的加齢(reproductive aging)に関する国際基準であるStages of Reproductive Aging Workshop(STRAW)+ 10 分類(図17)に基づいて分類されたStage -2 から-1 に相当する時期である.

  • 以下に閉経移行期とその周辺の時期について,解説する.

a.生殖期後期(Stage -3b ~ -3a)

  • 卵胞数の減少に伴って,抗ミュラー管ホルモン(AMH)とinhibin B の血中濃度が低下を続ける.Inhibin B のネガティヴ・フィードバックが弱まることによって,血中FSH 濃度の上昇が始まる.FSH の上昇は発育卵胞数の増加を招き,卵胞期は2,3日間短縮することが多い.
  • このことから,「最近月経周期が少し短くなった」という訴えがあった場合に,「閉経移行期の入り口」という説明をすることが多い.

b.閉経移行期前期(Stage -2)

  • 閉経移行期前期は「月経周期が7日以上不規則になる」時期と定義される.
  • 血中inhibin B 濃度の低下ののちに増加したFSH の作用により,ある周期の黄体期の途中で別の卵胞がリクルートされ,血中E2 濃度が上昇する.このLOOP(luteal out-of-phase)周期がLH サージを引き起こして排卵を伴えばその周期は短くなり,排卵が起こらないと周期は長くなる.
  • この時期に多様な間隔・持続日数・量のAUB がみられることが最も多く,閉経移行期のAUB-O の大部分はこの時期に発生するものと思われる.

c.閉経移行期後期(Stage -1

  • 閉経移行期後期は「月経の間隔が60 日以上になる」時期と定義され,この時期には血中FSH 濃度が25IU/L 以上となる.排卵が起こらないか,あるいは起こっても十分な黄体ホルモンが産生されないことが多い.
  • この時期にももちろんAUB-O はみられるが,上記閉経移行期前期(Stage -2)に比較してその頻度は減少する.

d.閉経(Stage 0)~閉経期後期(Stage + 2)

  • 閉経の唯一無二の定義は「最後の月経」であるが,ある月経が「最後」であるということは,1年間無月経であった時に1年前を振り返って初めてそれと定義される.
  • この時期に,患者から「あれが最後の月経だと思っていたら,6カ月後に数日間だけ出血があった」という類の訴えがあり,振り出しに戻って閉経年齢の決定を延期すべきか,「最後の月経」を固定して以降の出血をAUB とするか,悩むことがしばしばある.しかしながら6カ月間月経がなければ内分泌学的には「ほぼ閉経」であると考えられ,いたずらに定義にとらわれず,このような出血をAUB と考えるのがより適切であると思われる.

②閉経移行期にAUB を認めた場合の対応

  • 月経は「約1カ月の間隔で自発的に起こり,限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」と定義されるので(産科婦人科用語集・用語解説集改訂第4版),閉経移行期に周期性を失った不規則な出血は厳密には月経とは呼べないのであるが,この時期に患者が「月経周期の乱れ」として報告するものの中には様々な間隔・持続期間・量の出血が混在しており,これらすべてをAUB-O とすることも理論的には可能である.
  • ただし,悪性疾患を含む器質性要因(PALM)との鑑別を行うべきことは言うまでもない.器質性要因を疑った場合の対応は他稿を参照.
  • さらに,PALM および血液凝固異常(C)や医原性によるもの(I)が否定され,閉経移行期と考えてよい年齢であれば,閉経移行に伴う排卵異常(O),あるいはむしろ「閉経移行期に生理的にみられる排卵・月経周期の乱れ」である,という説明を行うことに大きな問題はないと思われる.
  • 対応としては,閉経周辺期であることを認識した上で,症状に合わせて治療を行うことの利益・不利益を検討する.
  • 「月経周期が長くなる」という症状のみの場合には,基本的には経過観察とする.
  • 出血量が多い場合や月経期間の長い場合には,貧血の評価を行い,ホルモン治療の適応か否かを検討する.
  • 月経間期出血の場合は,患者の不快感なども考慮して判断する.
  • FSH の測定や基礎体温表による排卵の有無の評価は,閉経移行期という時期にあることを判断する上では有効かもしれないが,治療方針を検討するためには意義はあまりないように思われる.

2 )思春期におけるAUB とその対応

ポイント

  • 思春期のAUB の95%は無排卵性の機能性子宮出血である.
  • 重症度の評価を行いつつ,患者の意向を確認し,治療方針を決定する.

①思春期のAUB の特殊性

a.内分泌的な問題

  • 卵巣機能調節を司る視床下部・下垂体・卵巣軸(hypothalamo-pituitary-gonadal axis)は胎生期に完成し,乳児期にエストロゲン産生が開始する.その後,2~3歳になると思春期初来前に特徴的な性腺機能抑制状態になる.乳房発育が開始する1年前からゴナドトロピン分泌が増加し始め,エストラジオール分泌の増加とともに視床下部・下垂体・卵巣軸が機能を開始し,月経が初来する.
  • しかし,排卵に必要なエストラジオールのポジティブフィードバック調節の成熟には月経初来後1年か,それ以上の時間を要するため,その間は無排卵に伴う不正性器出血を生じやすい.思春期のAUB のうち,実に95%がいわゆる無排卵性の機能性子宮出血であるといわれている.

b.出血性疾患の顕症化

  • 過多月経を生ずる原因となる出血性疾患として,血小板減少症(ITP:特発性血小板減少症),von Willebrand 病,血小板機能異常などがある.これらの疾患は,出血傾向を呈することで初経発来前に診断される場合もあるが,月経発来により初めて顕症化することも少なくない.
  • 特にvon Willebrand 病は大部分が常染色体顕性遺伝であり,わが国における推定頻度は1/100,また,出血症状を呈する例は1/10,000 とされている.
  • その他,急性白血病,血小板の脆弱性による出血傾向を来すEhlers-Danlos 症候群,良性関節過動症候群がAUB の原因となることもある.

c.その他

  • 思春期女性においても妊娠に関連した出血には注意する.
  • 頻度的には少ないものの子宮内膜ポリープ,子宮筋腫,ホルモン産生卵巣腫瘍,内分泌疾患(甲状腺機能亢進症,甲状腺機能低下症,高プロラクチン血症),抗けいれん薬(ステロイドホルモン代謝活性上昇により生ずる相対的エストロゲン・プロゲステロン作用低下)などが思春期のAUB に関係することがある.
  • AUB の定義上含まれないが,外傷や異物の腟内挿入による出血,器質的な異常(子宮頸管ポリープ,稀に子宮頸癌),クラミジア頸管炎,PID も不正性器出血の原因となることがある.

②思春期のAUB の診断

  • 思春期のAUB の診断におけるポイントと診断時の留意点,鑑別診断を表15 に示す.

a.既往歴・家族歴

  • 血友病,出血傾向などの既往歴,家族歴の有無を確認する.von Willebrand 病では,家系内に分娩時の大量出血や,それによる子宮摘出の家族歴を認めることがある.既往歴では,甲状腺疾患,自己免疫疾患の既往,抗痙攣剤の服用の有無も確認する.

b.生活歴

  • 食習慣(ダイエットや過食),運動,精神的なストレスについて聴取する.
  • 詳細については研修ノートNo.106『思春期のケア』の15.摂食障害のケア女子アスリートを参照していただきたい.

c.婦人科病歴

(a)月経歴
  • 初経年齢,月経周期,月経持続日数,経血量,経時障害,最終月経について聴取する.特に経血量については,1日に必要な生理パッドの枚数や,タンポンの個数は過多月経の診断に有用とされ,1日にびしょ濡れのパッド3枚使用や6個以上のタンポン使用が3日か,それ以上続く場合は,月経中に80mL 以上の出血があると推定できるとされている.
  • 経時障害については,登校可能かどうか,鎮痛剤服用が必要かどうか,既にホルモン療法を受けているかどうかなどについて聴取する.
(b)性交の有無,既往妊娠歴
  • 性交経験の有無,また,性交開始後であれば,初回の性交年齢,性交と出血との関係について聴取する.
d.診察
  • 思春期女性の婦人科的診察については研修ノートNo.106『思春期のケア』の1.診察時の注意点を参照されたい.診断に有用な画像診断では,性交経験があれば,同意を得たのちに経腟超音波検査,なければ経直腸超音波検査,あるいは膀胱充満後に経腹超音波検査を行う.また,MRI 検査はWunderlich 症候群などの形態異常の診断に至ることもあるので,器質的異常を除外するために有用である.
e.検査
  • 出血が妊娠に関連する疑いがあれば,妊娠反応を行う.貧血が疑われる場合には全血算,凝固異常が疑われる場合には全血算に加えてAPTT,PT,フィブリノゲン測定,可能であれば出血時間検査を行う.PT,フィブリノゲン値が正常で,APTT の延長を伴う場合はvon Willebrand 病が疑われるので,血液内科などと併診する.
  • 卵巣機能の評価には,LH,FSH,TSH,プロラクチン,estradiol,progesteroneの測定を行う.
  • 思春期では正常でも一過性に高アンドロゲン状態となり,PCOS 的となるため,思春期におけるPCOS の診断基準が検討されており,その診断には注意が必要だが,AUB の病態としては拮抗されないエストロゲン分泌の状態にあることに留意する.

③思春期AUB の管理

  • 思春期のAUB の管理フローチャート(図18)に示す.

  • 思春期のAUB の管理にあたっては,
    ①重症度の評価
    ②患者の意向の確認
    避妊を兼ねてOC の服用を希望するか否か,あるいは黄体ホルモン製剤などを用い,周期的な月経の回復を優先したいかどうか
    ③ ほとんどが無排卵性の機能性子宮出血であり,月経が不規則となる場合があることなどを説明
    の3段階が肝要である.
  • 治療の目的は,①止血,②子宮内膜の周期性の回復,③貯蔵鉄の補充に要約される.
  • 『 産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編 2020』によれば,CQ307 器質性疾患のない大量の急性異常子宮出血に対する薬物療法として,プロギノンデポー10㎎とプロゲデポー125㎎(2023 年販売中止予定)の同時筋注,あるいは中用量OC であるプラノバール(エチニルエストラジオール50μg,ノルゲストレル0.5㎎含有)1錠/ 日の7~10 日投与を推奨している.中用量OC を投与した場合,悪心・嘔吐を認める時には制吐剤の使用も考慮する.また,トラネキサム酸(トランサミン)は経口投与,あるいは即効性を期待する場合に静脈内投与(わが国の添付文書によればトランサミン10%は1回5~25mL を点滴静注すると記載されている)を推奨レベルC で推奨している.
  • NSAIDs の投与に関しては,月経痛を緩和させて患者の不安を軽減する効果以外に,トロンボキサンとプロスタサイクリンのバランスを変化させることで,経血量を減少させる効果があるとされている.

3 )多囊胞性卵巣症候群

ポイント

  • PCOS においてAUB を認めた場合は,機能的要因だけでなく器質性要因も念頭において精査を行う.
  • 挙児希望や肥満の有無から,治療方針を決定する.

 

  • 多囊胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovary syndrome)は生殖年齢の女性の5~10%にみられ,排卵障害による月経異常を主徴とし,多彩な内分泌学的・代謝学的特徴を呈する症候群である.
  • PCOS では月経不順が多く認められ,排卵障害に伴う破綻出血や月経時以外の不正性器出血などAUB を認めることも多い.また,長期にわたる排卵障害や肥満を呈しやすいことから,子宮体癌の発症リスクが高いことが知られている.この傾向は閉経前の女性において顕著であり,閉経後にはリスクは低下するとされている.したがってPCOS においてAUB を認めた場合は,機能的要因だけでなく器質性要因も念頭において精査を行う必要がある

①診断

  • PCOS の診断基準として,国際的には2003 年に作成された診断基準(ESHRE/ASRM 2003,ロッテルダム基準)が用いられることが多い.一方,わが国では日本人女性のPCOS の特徴を組み込み,かつ国際的基準とも整合性を取る形で作成・改定された診断基準(日産婦診断基準2007)が用いられている.両者の違いは,ロッテルダム基準においては「月経異常」は診断基準の1つであるが必須項目とはされていないのに対し,日産婦診断基準2007 では「月経異常」が必須項目として組み込まれていることである(表16).

②症状

  • 既に述べたとおり,PCOS では月経異常に加え,多彩な内分泌学的・代謝学的特徴を来す.具体的には,排卵障害による不妊症,多毛やニキビなどの男性化徴候,肥満やインスリン抵抗性,2型糖尿病やメタボリックシンドロームなどの栄養代謝疾患,うつ病などのリスクが高まる.
  • 日本のPCOS 女性は欧米のPCOS 女性に比べて,男性化徴候や肥満の発症リスクが低いことが知られている.一方,日本を含む東アジアのPCOS 女性では,肥満を来していないにもかかわらずインスリン抵抗性を示す症例が多いとされている.
  • また,PCOS では子宮体癌のリスクが2~20 倍に高まり,閉経前の女性においてその傾向は顕著であるとされている.すなわち,閉経前のPCOS においてAUB を認めた場合,無排卵に起因する機能性出血と子宮体癌などに起因する器質性出血の鑑別が必要となる.経過や臨床所見から必要と判断される場合には,細胞診や組織診を積極的に行い早期診断に努める.

③治療

  • 治療に先立ち子宮体癌などの器質性疾患がないことを確認し,日本産科婦人科学会が2009 年に作成したPCOS の治療指針に沿って治療を進める(図19).
  • 挙児希望の有無にかかわらず,肥満があれば減量を第一選択として推奨する.減量によって栄養代謝疾患の発症リスクが低下するほか,排卵機能の回復が期待できる.また,排卵障害や肥満の解消に伴い,子宮体癌の発症リスクが低下すると考えられる.
  • 妊娠を希望する場合はクロミフェンやゴナドトロピンを用いた排卵誘発法,妊娠を希望しない場合は黄体ホルモン製剤の単独投与や,エストロゲン製剤と黄体ホルモン製剤を用いたカウフマン療法が適応となる.
  • 男性化徴候を認める場合は,アンドロゲン抑制効果を期待して低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬を用いることもある.いずれにせよ,定期的に月経または消退出血を起こすことが,子宮体癌の発症予防の観点からも重要となる.

4 )内分泌代謝異常

ポイント

  • 高PRL 血症と甲状腺機能低下症などの内分泌・代謝疾患はAUB の原因となる.
  • 妊娠の除外や腫瘍性疾患のスクリーニング,超音波検査などとともに,LH,FSH,エストラジオール(E2),テストステロン,PRL,TSH,free T4 を含む血液検査を行う.

①排卵異常に伴う異常子宮出血を来す内分泌・代謝疾患

  • 排卵異常に関連する異常子宮出血(AUB)は,無排卵によりエストロゲンが子宮内膜に作用し続け,子宮内膜が肥厚したのちに破綻出血を来すもので,時に大量の出血となる.これは,視床下部-下垂体-卵巣軸のどのレベルの異常でも生じ得る.無排卵の原因としては,他項で説明される思春期や周閉経期といった生理的なものの他に,病的な状態として多いものは前項で述べられている多囊胞性卵巣症候群(PCOS)だが,他にもいくつかの内分泌・代謝異常が関係することが知られている.
  • 月経異常を来す内分泌代謝疾患としては,表17 に示すように,PCOS 以外には,高プロラクチン(PRL)血症,甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症,神経性やせ症,医原性の卵巣機能不全などがある.中でもAUB の原因として特に注意が必要な内分泌・代謝疾患は,高PRL 血症と甲状腺機能低下症である.

  • 図20 に排卵異常を伴うAUB の診断手順を簡単に記した.AUB を主訴に来院した女性が月経不順を認めており,排卵異常が疑われる場合,妊娠の除外や腫瘍性疾患のスクリーニング,超音波検査などとともに,LH,FSH,エストラジオール(E2),テストステロン,PRL,TSH,free T4 を含む血液検査を行う.結果により異常値が認められたら,さらにその状態を来す原疾患について精査する.
  • いずれにしても原疾患に基づく排卵異常に対しては,まずは原疾患への治療を開始するのが原則である.

②高プロラクチン(PRL)血症

  • 乳汁漏出がみられる場合はもちろんのこと,乳汁漏出がなくても無月経であれば高PRL 血症の可能性があることに留意する.診断には,まずは血液検査でPRL 値を確認する.
  • 高PRL 血症の原因疾患としては,プロラクチノーマ,Argonz-del-Castillo 症候群,Chiari-Frommel 症候群,原発性甲状腺機能低下症,acromegaly に伴うもの,間脳腫瘍などがあり,他に薬剤性もみられるので,薬物の服用有無について必ず確認する.
  • 原因薬物としては,向精神薬(ハロペリドール,クロルプロマジンなど),抗うつ薬(イミプラミンなど),制吐剤・抗胃潰瘍薬(スルピリド,メトクロプラミドなど),降圧薬(ベラパミル,メチルドパ)などが挙げられる.特にスルピリドは抗うつ作用を目的として処方されていることが多い.商品名としては,ドグマチール.,アビリッド.,ベタマック.,クールスパン.,ビリカップル.などが該当する.
  • 問診では薬物服用以外に,妊娠の可能性,最近の体重変化,皮膚乾燥,頭痛や視野狭窄についても確認する.乳汁漏出については左右とも確認する.
  • PRL 値が正常上限から100ng/mL 程度の場合は薬剤性や機能性であることが多いが,150ng/mL 以上の場合はプロラクチノーマが疑われるので,MRI などで精査する.
  • 薬剤性が疑われる場合は,原因となる薬物の中止または減量が考慮されるので,処方医と相談する.また,プロラクチノーマの場合は内分泌内科医または脳神経外科医にコンサルトし,対応を検討する.視床下部性の高PRL 血症に対しては,ドパミン作動薬による治療を行う.具体的には,カベルゴリン(カバサールⓇ)やブロモクリプチン(パーロデルⓇ),テルグリド(テルロンⓇ)を使用する.

③甲状腺機能低下症

  • 甲状腺機能亢進症では無月経の他に希発月経,過少月経,無排卵などが起きる一方,甲状腺機能低下症では,希発月経や無月経の他に,頻発月経や過多月経も起こることが知られている.
  • 月経異常以外の症状としては,無気力,易疲労感,寒がり,体重増加,便秘などがみられる.
  • 血液検査においてfree T4 が低値の場合,甲状腺機能低下症が疑われる.TSH 高値を伴う場合は原発性甲状腺機能低下症が,TSH が低値または正常の場合は中枢性甲状腺機能低下症が考えられる.さらに甲状腺自己抗体である抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体や抗サイログロブリン(Tg)抗体を検査し,これらが陽性の場合は慢性甲状腺炎(橋本病)を考える.一方,出産後やヨード過剰過多によっても,一過性甲状腺機能低下症が生じることがあるので,問診によりこれらが疑われる場合
    は間隔をあけて再検査を行う.
  • 原則として内分泌内科医にコンサルトする.一般的な薬物療法としては,甲状腺ホルモン薬が使用される.具体的には,L- サイロキシンであるチラージンS Ⓡ,レボチロキシンNaⓇなどが用いられる.TSH やfT4 の値を指標にして投与量を調節する.