(3)婦人科的診察
・ 重要な疾患が予測される場合には,十分な説明後の同意を得た上で,視診・直腸診・超音波検査(経直腸または経腹超音波)などを行う.
・ 一般的には 16 歳以上,筆者の感覚では 10 歳以上であれば,理解力に応じた言葉を使って説明をすれば,検査で得られる利益と検査に伴う苦痛について理解を得られることがほとんどである.
・ 本人の申告による性交渉の経験の有無は,参考にするが鵜呑みにしない.性交渉の経験があっても思春期の場合は内診・腟鏡診を嫌がる場合も多く,また性交渉の経験がないといっても妊娠・性感染症(STD)に罹患しているケースは多い.
・ 本人が診察を受けることを選択した場合も,視診あるいは経腹超音波検査など侵襲の少ない方法から行う配慮をし,最初から内診や腟鏡診を行うことは避ける.
・ 途中で気が変わったり,苦痛を伴ったりした場合は,いつでも中止を依頼してもよいことを最初に伝える.
・ 初診時に決心できないようであれば,説明だけにとどめ,後日来院させることも考慮する.
・ 診察を受けないことを選択した場合は,薬物療法などを先行させてもよいが,その場合でも,次回外来以降に診察の必要性があることは伝えておく.
・ 診察医が男性でも女性でも,本人の緊張緩和のため,リスク管理のために女性看護師を必ず立ち会わせる.
1 )視診・内診(直腸診)・腟鏡診
・ いきなり内診や腟鏡診を行うことは避ける.
・ 女児,特に 4~9 歳頃は外性器を少し触っただけでも,強い疼痛や不快感,恐怖・怒りといった感情をもつため注意が必要である.このような反応は出生時にはなく,また 10 歳以降は次第に減弱する.
・ 性成熟前の女性の場合は,内診よりも直腸診(腹壁直腸双合診)の方が所見が取りやすい場合も多い.
・ 女児の場合,成人用の内診台よりも通常のベッドに仰臥位で寝かせ脚を開かせたり(両膝を腹部の上の方にくるように保持),Sims 位や胸膝位などの方が見やすい場合もある.
・ 内診台のカーテンは本人の好みを聞く.閉じている方が怖いという場合も多くその場合は開ける.
・ 診察器具も怖がるので見せない方がよいと書かれている教科書もあるが,むしろ見せた方が安心する場合もあり,いずれにせよ本人とコミュニケーションをとりながら診察をすすめ,黙って器具を入れるようなことが決してないようにする.
・ 性交渉の経験がない場合でどうしても腟鏡診が必要な場合(異常帯下や不正出血が持続する場合,異物や子宮奇形を疑う場合)は SSS サイズのものや耳鏡などを用いる.
・ 子宮鏡(ファイバースコープ)が有用なこともある.
・ 覚醒下での診察が困難な場合は全身麻酔下での診察も考慮する.
2 )経腟・経直腸超音波検査
・ 性交渉の経験がない場合は経直腸超音波検査を選択する.
・ その場合も必ず説明し同意を得た上で行う.
・ 経直腸超音波検査は直腸診をした後に行うと怖がらないことが多い.
・ 超音波画像のモニターも見たいかどうか聞く.筆者の経験では見せながら施行した方が怖がらないことが多い.