(3)ISRR 発症の素因となるリスク因子と対応
・ ISRR 発症のリスク因子を箇条書きで示した.
・ 10~ 19 歳(ただし,この年齢層外でも発生する可能性もある)
・ 血管迷走神経性失神の既往
・ 注射にまつわる過去のよくない経験(例:痛みや血管迷走神経性失神など)
・ 注射に対する恐怖心(注射針や侵襲的な医療処置などへの恐れ[blood-injectioninjury type phobia]含む)
・ 不安障害や発達障害(特に自閉スペクトラム症)
・ 針に対する強い恐怖心のスクリーニング:予診票やチェックリストにより,針に対する強い恐怖心を察知することができる(9 歳以上).
例 ・針がどのくらい怖いですか?
・その怖さは,通常(友人など)よりも強いと思いますか?
・ 採血や注射など針に刺されることは怖いので,できるだけ避けるようにしていますか?
※被接種者ではなく,保護者に訊ねることも可.
・ 対応として,接種前のカウンセリングや行動介入を考慮し,特に強い恐怖がある場合には専門医に併診の上で鎮静や麻酔下に接種することも検討する.
・ ISRR のリスクがあると判明した人に接種する際の留意点を表10 にまとめた.
・ 広義の急性ストレス反応(交感神経優位,副交感神経優位の両方)のリスクを低減するためには信頼できる身近な人と同席させること,かつ他の被接種者とは一緒にならないようにすることが重要である.これにより,他の被接種者に見られているという「他人の目」を気にすることから生じるストレスをなくすことにつながり,かつ接種時にストレスに伴う反応(失神など)が起こっても,それを他人が目撃することにより接種への恐怖が他人に伝播することを避けることができる.
・ 血管迷走神経反射のリスクがある人については接種時の体位,および接種後の安静と観察が重要であり,表10 の記載の要領で「筋緊張法」を試みることも推奨される.本邦では予防接種時にこのような運動を行うことはほとんどないと思われるが,日本赤十字社では献血に際して採血時に発生する気分不良やめまいなどを防ぐためにレッグクロス運動(下肢筋緊張運動)の実施を推奨している(http://www.jrc.or.jp/donation/pdf/leg%20cross%20pdf.pdf).下肢の筋緊張は静脈還流を促進させて左室拡張期圧を上昇させ,結果として心拍出量が増すことで脳血流量を増加させて失神や気分不良などを防ぐものと考えられている.