(4)卵巣組織凍結・移植の現状と展望
・ 卵巣組織凍結保存法は緩慢凍結法(標準的方法)とガラス化法の 2 つに大別される.また,凍結融解卵巣組織の移植部位は残存卵巣,卵管,腹膜などが一般的である.現状,凍結保存法および移植法ともに確立された方法がない.
・ 研究段階の方法であるが,世界で 130 例以上の生児が獲得されている.
・ 日本産科婦人科学会に登録されている,医学的適応による卵巣組織凍結・保存に関する登録施設のみ実施可能であり,2020 年 4 月現在,全国で 45 施設が実施可能施設となっている.
・ 現時点では卵巣組織凍結の明確な選択基準はない(特に,年齢に関する適格基準は臨床試験により異なる)が,Edinburgh selection criteria が参考とされる(表32).
・ 本邦において小児がん患者の卵巣組織凍結数は増加傾向にあるが,凍結卵巣組織移植に達するまでには 10 年単位での時間を要すことから,小児がんサバイバーに対する卵巣組織移植例はまだない.海外では,生産児獲得例が存在するほか,0 歳児での卵巣凍結症例が報告されており,本邦よりも進歩している現状がある.今後卵巣移植患者が増加することが予想され,移植後の評価(がんの再発率,妊娠・分娩にかかわる事項など)が望まれる.