(4)産褥性甲状腺炎
- 妊娠前には甲状腺機能異常がなく,分娩後1年以内に認められる一過性の甲状腺機能異常を産褥性甲状腺炎という.一過性の機能異常は,亢進型,低下型,および亢進症型から低下型へ移行する古典型の3つの病型がある.亢進型と古典型は各々1/4,低下型が1/2を占める.亢進型および古典型は,産褥2~6カ月頃に亢進状態で発症し分娩後1年までに自然緩解する.低下型は分娩後3~12カ月に発症し,多くは自己免疫性疾患(橋本病)が原因で,その10~20%は慢性甲状腺機能低下症へ移行する.亢進期は易疲労感と動悸が主で,暑がり,神経質などの症状を示す.低下期は易疲労感,脱毛,うつ気分,集中力の低下,皮膚乾燥などを認める.多くは通常の産褥期の不定愁訴に類似するため見逃されやすい.