(8)おわりに

・ 予防接種は感染症予防に必須の手段であるが,現状では本邦の思春期女子へのHPVワクチンの接種はきわめて低調であり,これは接種する医療関係者も,接種を受ける女子や保護者も安全性への懸念が拭えないためと考えられる.このような現状を打破するためには医療関係者がまず ISRR の概念を知り,その対処法を学ぶことで安全に接種が行えるという自信をもつことが重要になる.
・ 予防接種は公衆衛生を向上するためのきわめて強力な手段であると同時に,医療手技の中では最もシンプルなものの 1 つであるため,医療者は「ちょっと針を刺すだけ」という認識で安全な接種への十分な配慮を欠いていたケースも過去にあったかもしれない.今後はシンプルな手技ではあるが身体的,心理的,社会的な要因が多感な思春期女子に及ぼす影響に心を配りながら接種することで,本邦の予防接種をより進化した安全なものにしていくように努めていくことが,いま強く求められている.

(本項には,WHO が作成した英語版を翻訳あるいは要約した内容が含まれていますが,この翻訳の内容または正確性についてWHO が担保するものではありません.)