(1)国際診療支援センターにおける外国人患者への対応

1)外国人患者の受け入れにおける取り組み

 九州大学病院本院(以下,本院)は,全国の国立大学病院最大規模の病院であり,歯科を含め,ほぼすべての分野の医療を網羅した先進的医療を提供する医療施設である.本院国際医療部国際診療支援センター(IPAC)は,国内外の外国人および海外在住の日本人患者の受診を,国内の日本人患者と同様に平滑に行われるようサポートしている.
 本院が立地する福岡市は,中国,韓国,台湾を始め,アジア各国から多くの国際便が飛来する福岡国際空港からアクセスも良好であり,博多港へのクルーズ船の寄港数も日本最多である.急激に増加する海外からの旅行者が急病時に本院へ搬送されることも増えており,適宜IPACが対応している.九州大学病院へは,平成29年度は国籍ベースで49カ国361件(中国:156件,韓国:53件,ベトナム:19件,ネパール:17件,アメリカ:12件)の新規外国人患者が受診している.

2)国立大学病院国際医療連携ネットワークについて

 近年,先進医療を求める海外在住の患者の受入相談が急増し,そのニーズに応じ,また受け入れリスクを軽減するために,平成23年度に本院が全国国立大学附属病院長会議に「国立大学国際医療連携ネットワーク」の設立を提案し,承認された.その後,本院は事務局を務めており,同ネットワークの窓口ホームページを管理している.受診を希望する国際患者から電話・メール・窓口相談を受けた際は,同ホームページへ必要情報の入力を要請し,入力した患者に対して,本院または他の大学病院への受入判断や支援をIPACの専任医師が行っている.国立大学病院の中でも主体的に国際患者に対する医療連携の向上に努める拠点病院(全21大学病院)を図に示す(図20).
 入力を要請する必要情報の内容は,患者や相談者の氏名,病名,既往歴,受診目的,相談内容,感染症情報(活動性のある結核や多剤耐性菌保持の可能性把握),希望する医療機関名,日本国内の協力者の有無,支払限度額や支払方法,受診希望日程などである(図21).本院受診を希望する際は,各診療科に任命された国際担当医(約50人)に受診可否の最終判断を依頼する.当ネットワークを介して受診した国際患者数およびその特徴を図22,23に示す.





3)通訳翻訳業務の実際

IPACはセンター長(兼任医師),専任医師1名,専任通訳2名(英語,中国語)を含む計7名で構成される.なお,副センター長は,感染症専門医(兼任医師)である.
 対面通訳は外来や入院において患者や医療従事者からの依頼により行う.診療時間外・土日祝日の通訳や英語・中国語以外の通訳が必要な際はタブレットや電話通訳による通訳サービスを取り入れている(図24).
 翻訳支援は,診療科の依頼で院内の同意書や診療情報提供書などの文書に対して行う.母国の診療情報提供書は,まずは患者側へ英・和訳の準備を依頼している.
 IPACの通訳・翻訳・受け入れ相談は年々増加している(図25).



4)最後に

 IPACにおける取り組みについて述べた.今後もさらに国際患者の日本の医療機関受診の需要は高まることが予測される.
国際患者が安心・安全に日本の医療機関を受診でき,日本の医療機関も受け入れリスクを軽減できる環境をつくることが必要である.

文献
1)国土交通省港湾局産業港湾課ホームページ
2)国立大学附属病院長会議ホームページ