1.はじめに

 阪神淡路大震災の「ひとりでも多くの命を助けよう」という思いから平成 17 年に災害派遣医療チーム(DMAT)が発足し,その後東日本大震災,熊本地震や豪雨災害にも出動実績があり世間に認知されてきた.しかし,東日本大震災や熊本地震では新生児・妊産婦搬送の調整に苦労したことから,発災直後から彼らの避難や搬送を調整する専門家が必要だと考えられた.周産期医療体制のあり方に関する検討会ではこの指摘を受けて「小児周産期リエゾン」という調整役を要請する方針を周産期医療整備指針に盛り込み,人員の配置が始まっている.

 しかし,災害時に地域の拠点となり乳児や妊産婦を護るのは地域の医院や病院である.災害時は通信手段やライフライン,搬送経路,搬送手段が平時と同じではない. すなわち,電話が不通になり水道やガスが来なくなり道路は寸断され救急車は出払っている.このような状況下で妊産婦の状態を把握しトリアージするためには,地域の医院や病院が平時から災害への対応を練っておく必要がある.また,妊産婦に日頃から災害時の対応や注意点をあらかじめ説明することが望ましい.そこでこの章では大阪での取り組みを一例に小児周産期リエゾンがどのような活動をしているかについて俯瞰的に述べる.