1.はじめに
「災害と精神医学と周産期」のテーマで前提としているのは,平時でも周産期の女性はメンタルヘルス上のリスクが高い上に,災害時には周産期の女性のメンタルヘル ス上のリスクが高くなるという二重のリスクである.この前提に基づき,産婦人科医やコメディカルスタッフは,災害時には平時に増して,患者女性のメンタルヘルスに留意する必要が出てくる.その場合,産婦人科医やコメディカルスタッフに求められるのは,被災地の患者女性のメンタルヘルス上の変化に対する感度の高さと,気になる患者を適切に精神保健領域に紹介する方法であると考えられる.そのため本稿では, 周産期の女性で留意すべき精神疾患と被災地で発症しやすい精神疾患で重複するもの,および,周産期で留意すべき精神疾患を有する女性が被災した場合の場合についてまとめてある.個々の精神疾患の特徴については成書を参照していただき,本稿では,それらの精神疾患を有する女性患者への,産婦人科医や産婦人科領域のコメディカルスタッフにも可能な対応について言及してある.なお,実践的な内容については,筆者の被災地での支援活動の経験(東日本大震災(2011):自治体派遣の「こころのケア」チーム,熊本地震(2016)・西日本豪雨〔平成30年7月豪雨〕(2018):DPAT先遣隊)に基づいている.