1.日常臨床・通常時の準備・対策
(1)医療従事者間のコミュニケーションエラーの防止(メンタルモデルの共有):各論2(1)
- アサーティブ・コミュニケーション
- 2回チャレンジルール
- CUS:Concerned,Uncomfortable,Safety
- SBAR:Situation(状況),Background(背景),Assessment(評価),Recommendation(提案)
- チェックバック
- ブリーフィング・ハドル・デブリーフィング
- 議論の見える化
(2)インフォームド・コンセントの留意点:各論2(2)
- インフォームド・コンセントは同意書に患者の署名をもらう儀式ではなく,患者が納得して自己決定するためのものであることを意識する.
- 治療方針を決める際は患者の価値観を問いかけて共有し,提案,対話して決定する.
- 患者の生活全体を視野にいれ,患者が主体的に考えてその人らしい人生を送ることができるように援助する.
- リスクの高い治療の説明には,正確で過不足のない情報を分かりやすく記述した説明文書を準備する.
- 情報は,全体像が把握できるように伝える.
- 衝撃を与える情報や,数値など理解しにくい情報を伝える際は,表現に配慮する.
(3)カルテ記載の留意点:各論2(3)
- 通常時:正常化バイアスに注意する(過度に楽観的な記載が混在していないか?)
- 急変後:後知恵バイアスに注意する(最初から分かっていたかのような記載ではないか?)
- 重大な症状・所見の記録には,どう対処したかの行動記録を連動させる.
- 紙カルテの追記・修正をする場合:二重線を引き,訂正した日時と訂正者の署名を記載する.
- 電子カルテの追記・修正をする場合:訂正のログが残る.訂正した時点で,訂正した理由をその時点のカルテに記載しておく.
(4)院内安全管理体制の確保:各論2(4)
- 医療安全管理マニュアルの整備
- 院内感染対策マニュアルの整備
- 医薬品安全使用マニュアルの整備
- 輸血マニュアルの整備
- 褥瘡対策マニュアルの整備
- 災害対策マニュアルの整備
- 個人情報保護規定の整備
- 医療安全研修会の実施
- 院内感染対策研修会の実施
- 医薬品安全管理研修会の実施
- 医療機器安全管理研修会の実施
- 放射線診療従事者に対する研修会の実施
- 医療安全管理委員会の設置
- 院内感染対策委員会の設置
- インシデント報告・アクシデント報告の実施
- リスクマネジメント会議での分析・改善策の提案
- コードブルー,スタットコールなどの緊急連絡体制の整備
- 救命救急処置のトレーニング
- AED や除細動器の場所や使用方法の周知,トレーニング
- 救急カートの設置場所や内容などについて周知
- 救急シミュレーション
- 院内の時計・PHS の時刻合わせ
(5)悪質・不当要求対策:各論2(5)
- ポスター・ホームページなどで,悪質・不当要求を絶対に許さない組織の方針示す.
- 悪質・不当要求には1人で対応せず応援要請する.
- 発生現場で基本対応を行う:毅然と対応する・会話は最小限にする・即答しない(病院として事実を確認してから回答するなどと答える)・約束をしない・事実確認ができない段階で謝罪しない.
- 対応する時間を決めておく(例えば 15 分以内)
- エスカレーションを防止できない場合には,防災センター,医療安全室などの対応窓口に連絡し,初期対応に切り替える:複数人で対応する・速やかに記録する・証拠を残す(防犯カメラ / IC レコーダーなど)・決められた場所に誘導する・あらかじめ対応時間を伝える.
- 違法行為には法的措置をとる:現場で警察に通報・事後に弁護士に相談.
- 再発防止策を検討する.
(6)医師賠償責任保険への加入:各論2(6)
- 補償の対象を確認
- 上限額を確認
(7)ピアサポート体制の構築(事故後の医療者ケアに特化):各論1(5)
- ピアサポート担当部署の設置
- ピアサポートを行う第三者機関との連携