2.福祉支援
(1)高額療養費(表45)
・健康保険を使って診療をうけた時の,1 カ月(暦月)の医療費の支払いが一定の額(自己負担限度)を超えた場合,超えた分が高額療養費として,各健康保険から支給される.
・同じ病院での診療費(外来,入院,院外処方せんにおける薬剤費など)が対象.
・保険適用外の費用(差額室料,病衣)や食事療養費は対象にならない.
・所得により「自己負担限度額」は異なる.
・払い戻しに 3 カ月程度かかる.
(2)高齢者の医療費助成(表46)
・ 75 歳以上の方,65 歳以上で一定の障害をもっている方は「後期高齢者医療」に加入することにより 1 割または 3 割の自己負担になる.
・ 70 歳から 74 歳の方は加入している健康保険から「高齢受給者証」が発行され, 2 割または 3 割の負担になる.
(3)身体障害者手帳
・ 障害認定は「永続すること」を前提とされているので,障害の原因となる疾病を発病して間もない時期や乳幼児期,障害が永続しないと考えられる場合(例えば,疾病の治療に伴う一時的な人工肛門の造設)などについては,認定の対象とならないことがある.「がん」ということだけで障害には該当しない.障害の部位により診断書が異なる.診断書の記載は指定医に限る.
助成内容:
・ 地域,障害の程度によって異なる退院支援のため,詳細は住民票のある市区町村に確認することが必要である.
・ 医療費助成制度は重度障害( 1~2 級)の該当に限る.
・ 福祉用具の交付(車いす・ストマ・パルスオキシメーター,電気式たん吸引器,人工喉頭など)
・ がんに関連する障害
・ 音声・言語機能障害(喉頭癌,食道癌)
・ 腎臓機能障害(腎細胞癌)
・ 呼吸機能障害(肺癌)
・ 膀胱または直腸機能障害膀胱癌,直腸癌)
・ 肝機能障害(肝細胞癌)
(4)生活福祉資金貸付制度
助成内容:
・無利子または低金利で,生活再建に必要な生活費などの貸付を受けられる.
対象となる方:
① 必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯(市町村民税非課税程度)(低所得世帯)
② 身体障害者手帳,療育手帳,精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者,その他,
障害者総合支援法によるサービスを利用しているなどこれと同程度と認められる者の属する世帯(障害者世帯)
③ 65 歳以上の高齢者の属する世帯(高齢者世帯)
手続き:
・ 居住する市区町村の社会福祉協議会
・ 資金の貸し付けを受けるには,民生委員の面接が必要になる.
(5)生活保護
・ 生活に困窮する方に対し,その困窮の程度に応じて必要な保護を行う制度.
・ 原則として,世帯の全員が利用できるすべての資産を活用し,年金や手当など,あらゆる制度を利用しても,なお収入が生活保護法で規定されている最低生活費に満たない場合に適用される制度である.
・ がん患者が申請する際には,適用されるかどうかの判断に,治療の内容や見通し,仕事の内容などがかかわってくる.
・ 生活保護は,申請日にさかのぼって支給されるため,早めに申請手続きの準備を進めておくことが大切である.
助成内容:生活・住宅・教育・医療・介護・出産・生凝・葬祭に対する費用
手続き窓口:原則住民票のある住所地の福祉事務所
(6)傷病手当金
助成内容:
・ 病気やけがで給与が支給されない時に,被保険者とその家族の生活を保障するための制度である.
・ 連続して 3 日間仕事を休んだ後,4 日目以後,休んだ日に対して 1 年 6 カ月を限度に支給される.1 日あたりの支給金額は支給開始日の以前 12 カ月間の各標準報酬月額を平均した額÷ 30 日× 2/3.
手続き:
・「 傷病手当金支給申請書」などで勤務先の事業主と医療機関に仕事を休んでいることを証明してもらい,各保険者に申請する.
支給される期間:
・ 傷病手当金が支給される期間は,支給開始した日から最長 1 年 6 カ月.これは,1 年 6 カ月分支給されるということではなく,1 年 6 カ月の間に仕事に復帰した期間があり,その後再び同じ病気ケガにより仕事に就けなくなった場合,復帰期間も 1 年 6 カ月に算入される.支給開始後 1 年 6 カ月を超えた場合は,仕事に就くことができない場合であっても,傷病手当金は支給されない.
(7)障害年金
・ 大腸癌,乳癌,子宮癌,肺癌,胃癌,肝癌などのがん全般が対象となる.
・ 障害年金の認定基準では悪性新生物による障害という枠に分類される.悪性新生物による障害の程度は,組織所見とその悪性度,一般検査および特殊検査,画像検査などの検査成績,転移の有無,病状の経過と治療効果などを参考にして,具体的な日常生活状況などにより,総合的に認定される.また,当該疾病の認定の時期以後少なくとも 1 年以上の療養が必要とされている.
助成内容:
・ 公的年金の加入者が病気やけがによって心身に障害を有し,日常生活や就労の面で困難が多くなった場合に受け取る年金である.
・ 障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金がある.
・ 障害手当金(一時金)の支給がある.
助成対象:
①障害の原因となった病気やケガの初診日の時点で下記のいずれかに該当すること
・ 国民年金か厚生年金のいずれかの被保険者であること.
・ 20 歳未満(年金制度に加入していない期間)であること.
・ 日本国内に住んでいる 65 歳未満の方で年金制度に加入していない期間(老齢基礎年金を繰り上げしている場合は除く)であること.
②一定の保険料の納付要件を満たしていること
・ 初診日の前日に,初診日がある月の 2 カ月前までの被保険者期間のうち,国民年金の保険料納付済期間と免除期間を合計した期間が 2/3 以上あること.
・ 上記要件を満たせない場合,初診日の時点で 65 歳未満でかつ,初診日の前日に,初診日がある月の 2 カ月までの直近 1 年間に保険料の未納期間がなければ,特例として納付要件を満たすことができる.
③ 障害の状態が障害認定日または,初診日が 20 歳未満の場合は 20 歳時点で等級に該当すること.
④ 障害厚生年金を受け取ることができる状態よりも軽い状態の場合,障害手当金(一時金)が受け取れる可能性がある.
(8)雇用保険(失業保険)
・ 会社を退職してから転職活動を行う場合,以前に会社で雇用保険に加入して一定要件に該当すれば失業保険(失業手当.正式名称は「基本手当」と言う)を受給することが可能である.
失業保険をもらうまでの流れ・手続き
・ 勤めていた会社から発行される「雇用保険被保険者離職票」をまず入手する.会社によっては依頼がなければ発行しないケースもあるので,離職前後に必ず確認する.
・ 離職票を手に入れたら,必要書類を持参し,速やかに現住居を管轄するハローワークに行く.
・ 求職申込
・ 離職票など必要書類の提出
・ 雇用保険説明会の日時決定
「求職申込み」は再就職の意思を示すもので必須となる.離職票を提出する際には記載されている離職理由が自分の認識と相違ないか確認し,異なる場合はハローワークの担当者にその旨を伝える.また次のフローとなる「雇用保険説明会」の日時について,担当者より案内がある.
①雇用保険説明会に参加する
指定された日時に雇用保険説明会(雇用保険受給者初回説明会)に行く.この説明会で「失業認定日」が分かりますので,チェックする.
②失業認定日にハローワークへ行く
失業手当を受給するには,月 2 回以上の求職活動が必要になる.失業認定日にハローワークへ行き,失業認定申告書を提出し,失業の認定を受ける.
③受給
失業認定日から通常 5 営業日後に,指定の口座に失業手当が振り込まれる.以後は,原則として 4 週間に 1 度,失業の認定をハローワークで受けることで継続的な受給が可能となる.
※ 失業保険の手続き後に,病気やケガで 15 日以上働けない場合に支給を受けられるのが「傷病手当」である.失業保険から傷病手当に代えることで基本給付の支給を引き続き受けることができる.傷病手当は失業保険に代わるものなので,受け取る金額や期間は変わらない.