2.大阪における災害時小児周産期体制

 大阪では平時より新生児搬送をあずかる新生児診療相互援助システム(NMCS)と母体搬送を預かる産婦人科診療相互援助システム(OGCS)が稼働し,緊急時の搬送先の選定やドクターカーでの搬送などにあたっている.このシステムは40年以上の歴史があり一般医家にも広く認知されているシステムで大阪府での小児周産期リエゾン会議では,災害時もこれら既存のシステムを活用することとなった.

 災害時周産期リエゾンの設置は大阪府が災害対策本部を立ち上げた時点とし,災害対策本部に小児周産期リエゾンの活動場所が割り当てられる.小児周産期リエゾンでは産婦人科のみならず在宅小児医療,小児集中治療,新生児の各セクションがDMAT調整本部と連絡を密にしながら地域ごとに設置される災害活動拠点やNMCS・OGCSに入る情報を共有しながら必要な手段を講じることになる(図23,24).また講習を受けたリエゾンメンバーは可及的速やかに災害対策本部へ参集し,シフトを決めて業務にあたることとしている(図25).この際リエゾンメンバーの身分は大阪府非常勤嘱託職員となる.

 災害時周産期リエゾンの活動はEMISやPEACEを用いた情報収集と発信,OGCSなどの既存のシステムや活動拠点からの報告による情報収集,搬送が必要な妊産婦をトリアージし救急車・ドクターカー・自衛隊車両・ドクターヘリなどによる搬送調整, ライフラインが断たれた施設へのロジスティックス,避難所にいる妊産婦の状況確認とトリアージ,非被災地域との物資や搬送の調整など多岐にわたるが,詳細は他章に譲る.