(3)院内シム(杏林大学の場合)

・当院では,毎月定例のシミュレーショントレーニング(K-Sim:Kyorin-Simulation education program)と,数カ月に1回超緊急帝王切開や産科異常出血についてのin situ simulation(実際の環境=現場でのシム)を開催している.両者は,目的,対 象とも異なる.
・K-Simは,学生,初期研修医および後期研修医1年目を対象とし,内容も正常経腟分娩,吸引分娩,内診(図55A),会陰切開・縫合,帝王切開子宮創部縫合および圧迫縫合(図55B)のような基礎的な技術の体験・習得,産婦人科への接触機会の増加と入局者数の増加を目的としている.
・in situ simulationは,多職種連携の向上を目的としていることから,対象はその症例にかかわる全医療者である.例えば超緊急帝王切開のシムは,上級医を含む産科医,小児科医,麻酔科医,助産師,手術室看護師,臨床検査技師,輸血部が参加している.
・それでは院内シムは,前述の問題点を解決できたのだろうか(表25).受講者の時間および経済的負担の軽減には一定の効果が認められ,教育内容も実践的である.一方,目的が異なり,対象者も一致していないシムの開催は,指導者は複数のプログラムと器材を用意する必要に迫られ,時間の負担も大きい.近年は労働基準法の順守と超過勤務費用の抑制が求められることから,指導者確保も問題となってくるであろう.また院内での開催は,研修を修了した医師にとっては,研修医やコメディカルの面前で恥をかかされる安全ではない環境と捉えられる可能性がある.特にシムでは,振り返り(デブリーフィング)を行わねば教育効果が半減する.つるし上げにならぬよう,よい点からの指摘(+/Δ:プラス/デルタ法)やGAS法*など,振り返りの手法を磨くことが肝要である.
・それでは院内シムは,前述の問題点を解決できたのだろうか(表25).受講者の時間および経済的負担の軽減には一定の効果が認められ,教育内容も実践的である.一方,目的が異なり,対象者も一致していないシムの開催は,指導者は複数のプログラムと器材を用意する必要に迫られ,時間の負担も大きい.近年は労働基準法の順守と超過勤務費用の抑制が求められることから,指導者確保も問題となってくるであろう.また院内での開催は,研修を修了した医師にとっては,研修医やコメディカルの面前で恥をかかされる安全ではない環境と捉えられる可能性がある.特にシムでは,振り返り(デブリーフィング)を行わねば教育効果が半減する.つるし上げにならぬよう,よい点からの指摘(+/Δ:プラス/デルタ法)やGAS法*など,振り返りの手法を磨くことが肝要である.
*GAS法Gather:学習者がシム中に何を考え,なぜその行動をしたのか積極的に聞き出すAnalyze:学習の行動について,じっくりと振り返り,分析するよう学習を促すSummarize:このシムで学んだことについての確認を促す