ポイント
- 数日間の保存的治療で改善がない場合や腹痛の増悪などの所見がみられた場合には手術を検討する必要があるため高次医療機関への搬送が必要.
- 複雑性腸閉塞の場合は,診断がついた時点で可及的速やかに手術を行う必要がある.
(1)はじめに
- 従来,本邦では機械性腸閉塞および腸管麻痺に起因する機能性腸閉塞をまとめてイレウスと呼称してきたが,海外では腸管麻痺のみをイレウスと呼ぶ.
- 本邦の『急性腹症ガイドライン2015』においても,機能性腸閉塞(腸管麻痺)のみをイレウス,機械性腸閉塞を腸閉塞と定義されている.
(2)腸閉塞の分類
- 腸閉塞は,血流障害のない単純性腸閉塞および血流障害を伴う複雑性腸閉塞に分類される.
- 緊急手術の適応となる複雑性腸閉塞か否かを判断することが重要である.
(3)腸閉塞,イレウスの診断および対応(図49)
- 帝王切開後に腹痛,腹部膨満,嘔気・嘔吐,排便・排ガスの停止などの自覚症状を認めた場合は,産褥子宮内膜炎などの感染の炎症波及によるイレウスや癒着による腸閉塞を鑑別に挙げる必要がある.
- 腸閉塞の場合,腸蠕動音は亢進することが多い.腹痛に関しては,腸閉塞の場合,間欠的な蠕動痛であることが多いが,複雑性腸閉塞では持続的な激しい腹痛や筋性防御を認める.
- 腹部レントゲン検査では,立位での鏡面像(niveau)の出現が特徴的である(図50).腸管内に腸液が充満している時はレントゲン上ガスを認めない(gasless abdomen)こともあるので注意を要する.
- CT 検査は閉塞部位の評価に有用であり,また造影CT を追加することにより腸管血流の評価を行うことができる.
- 血液生化学検査では,腸管拡張と内圧の上昇により,腸管の吸収能が低下し軽度の脱水や電解質異常を来すことがある.複雑性腸閉塞の場合,腸管壊死の進行に伴い,代謝性アシドーシスやDIC を呈することがある.
- 治療は,経鼻胃管やLong tube(通称イレウス管と呼称されている)による減圧を行う.数日間の保存的治療で改善がない場合や腹痛の増悪などの所見がみられた場合には手術を検討する必要があり,高次医療機関への搬送が必要である.
- 複雑性腸閉塞の場合は,診断がついた時点で可及的速やかに手術を行う必要がある.