山形県立中央病院における医師の働き方改革への取り組み

堤 誠司

山形県山形県立中央病院における
医師の働き方改革への取り組み

山形県立中央病院
総合周産期母子医療センター/産婦人科
堤 誠司

2024年度の実施に向けて、われわれ地方の産婦人科施設が取り組まなければならない働き方改革について、山形県の立場から述べさせていただきたいと思います。わたくしが勤務する山形県立中央病院は、総合周産期母子医療センターとしては2010年に認定されました。病院自体の病床数は609床、MFICUが6床、NICUが9床となり、山形県唯一の総合周産期母子医療センターとなります。山形県は大きく4つの医療圏に分けられ、各医療圏よりおおよそ1時間から1時間半で母体搬送を受けることができる、山形県のほぼ中央に位置しています。山形県の出生数はこの10年間で8,643件から6,191件と28%も減少しました。一方、当院への母体搬送受け入れ症例数の推移をみると、おおよそ70〜80件と横ばいであり、隣県の宮城県からの搬送も受け入れています。

当院の産婦人科スタッフは32年目の私を筆頭に5名おり(昨年度より1名減)、その他に1〜2名の初期研修医がローテーションしております。勤務体制を見てみますと、産婦人科病棟・MFICU・婦人科新患外来・再来・産科外来をそれぞれが担当し、宿直・土日祝日の宿日直はMFICU(専従)が1名、オンコール医師が1名で、分娩や救急患者はオンコール医師が対応することになっています。つまり5名がフル稼働する必要があるわけです。そのため、宿日直の回数+オンコールの回数は11〜12回/月で、この他に院外応援医師に平日の宿直を4回、土曜日の宿日直を2回担当していただき、勤務を廻している状態です。宿直明けの措置は、可能であれば初期研修医同様に引継ぎ後の勤務緩和や代替休の取得は容易にしていますが、実際午後の手術担当となるとなかなか休めないことも多いのが事実です。つまり現在は、5人なら各配置をぎりぎり回すことが可能だが、1人でも休むと業務に余裕がなくなってしまい、また院外からの応援医師が来れなくなると1人当たりの宿日直回数が増えてしまうという問題点があります。労働基準法第41条に定める宿日直勤務を遵守することが求められますが、根本的に私たちの宿日直は夜勤・休日勤務であることが現実の姿です。勤務間インターバル制度が導入された場合、見直す必要が出てくるわけです。この制度で15時間の連続勤務時間制限が生じるため、24時間以内に9時間の連続した休息時間をとる必要があり、当院の現状を踏まえると5名フル稼働でも実現は不可であり、現在同等の医療業務を実現させるにはプラス1名、休暇も十分にとれるようにするならさらにプラス1名が必要となります。これにMFICUが常時2名宿日直とすることが求められると、稼働できないことになります。どのようにして不足分の医師を補うのか、就労時間の上限を超えた場合に被る医療や学術活動への影響はどうしたらいいのでしょう、当面の課題をクリアする必要に迫られています。さて、これらの課題に対し、解決策はあるのでしょうか?あくまでも私見ですが、(1)大学医局より増員を請う(簡単に増員できるのであれば、当の昔に実現しているわけですが)、(2)近隣自治体病院との連携・合併を検討する、などしか考えられないのが現実です。また、研修医や修練医は上級医やメンターがあってこそ成長するわけですが、上長の命令に基づく学術活動の維持を求められるとなると、なかなか良案が思いつきません。どなたかご教示お願いします。

これまで「なおざり」にされていた医師の労働時間を見直さざるを得ない期限が生じ、限られた時間の中で、これまでと同等以上の質を維持しなければならず、単位時間当たりの個人負担は増大します。特に一施設当たりの医師数が少ない地方の医療施設ほど、被る影響は大きいことが予想されます。現状同等以上の医療を提供するためには、病院経営母体の枠を超えた統合等の抜本的改革を真剣に検討するべきであり、学術活動も萎縮しないように教育・修練の工夫が求められていると思います。

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事例紹介