徳島県徳島県における医師の
働き方改革への取り組み
徳島大学産科婦人科
吉田 加奈子
2024年4月からの医師の働き方改革への実施に向けて、徳島大学病院および徳島県内の関連病院における現状と取り組みについてご紹介いたします。
徳島県は6つの二次医療圏が設定されております。徳島市と小松島市は隣接し、徳島市には徳島大学病院、徳島県立中央病院、徳島市民病院が、小松島市には徳島赤十字病院があり、この2つの医療圏に分娩取り扱い施設が集中しております(スライド1)。徳島県の分娩取り扱い病院では、産婦人科医の平均年齢50歳代と高齢化が顕著で、3〜5名という少ないマンパワーで年間200〜500件の分娩、120〜400件の手術を行っているのが現状です。一人当たり月6〜8回の当直業務をこなした上で大学から産直の応援を派遣することにより、徳島県の周産期医療を維持しています(スライド2)。医療圏の統合・集約化が進んでおらず、医局からの医師派遣の増員が難しいため、各施設が宿日直許可を取らなければ分娩体制を維持できないというのが現状です。
徳島大学病院は、病床数692床、徳島県唯一の総合周産期母子医療センターとしてMFICU6床、NICU9床、GCU12床を設置しています。産婦人科の医局員は常勤15名、非常勤3名(現在育休中2名)の体制で、年間分娩数約600件、母体搬送180件、手術650件の診療を行っております。徳島大学病院としての「医師の働き方改革」に向けての主な取り組みとして、新しい勤務管理システム導入による勤務時間の客観的把握、兼業先の労働時間もふまえた勤務シフトの管理やタスクシフト・シェアなど労働時間短縮計画の策定および業務と研鑽の明確化があります(スライド3)。
「医師の働き方改革」のポイントは医師の健康確保が実質化されたことにあり、医師が健康で安心して働くことの職場作りを目指すには、医療資源(労働時間)の有効活用、医師が働きやすい環境作り、医師のモチベーションアップが必要になります(スライド4)。労働時間の有効活用として、勤務管理システムやタイムカード導入による出退勤管理、医療秘書による診療補助(電子カルテ入力、検査オーダ、診断書の記載、各学会から要請のある診療情報のデータ処理や入力作業など)、主治医制の見直し、カンファレンスは日勤帯に行う、分娩はできるだけ日勤で終わるよう努力する、などの取り組みをしておりますが、タスクシフトや主治医制の見直しなど医師の負担軽減のための体制には施設間格差があります。医師が働きやすい環境作りとしては、職員全員の時間外労働時間をチェックし時間外月120〜155時間以上の医師には産業医との面談を指示する、当直明けの午後は休みにする、育児中の時短勤務・当直回数の軽減、分娩手当の支給などがあります。学会・研修会への参加による情報収集、手術ハンズオントレーニングの定期開催などはモチベーションアップに有効ですが、これら研鑽と業務を明確に区別することが必要になります。「働き方改革」を達成するには医師ひとりひとりが勤務環境を改善していく意識を持つことが重要であり、医師自身による勤務管理、勤務時間の縮減努力、業務と業務外の明確化についての意識改革が必要であると考えます。