岐阜県大垣市民病院における医師の働き方改革への取り組みについて
大垣市民病院産婦人科
河合 要介
岐阜県の勤務医代表として、このような発表の場を与えて頂きましたことに感謝申し上げます。岐阜県で最多の817床を有する大垣市民病院における現状と医師の働き方改革についての取り組みについて説明させて頂きます。私の経歴については表①に記載の通りです。大垣市民病院は西濃医療圏約40万人の基幹病院として機能しており、産婦人科においては男性医師5名と女性医師2名の常勤7名で日常診療を行っております。マンパワー確保の取り組みにより、2024年4月からは常勤12名となる予定です。
まず、当院における各科の時間外労働時間を調査しました。大垣市民病院においては表②のように、宿直明けに朝から帰宅できるように前日に振替勤務といった体制をとっています。
働き方改革に取り組み始めていますが、令和3年度から4年度にかけて、時間外・休日労働時間が増加している診療科が多いことがわかりました(表③)。産婦人科は時間外の多い診療科の一つであることが分かります。医療の高度化・多様化、医師の専門化など、病院の発展には寄与する半面、時間外労働の増加に繋がる懸念もあります。このような現状を理解し、各科が危機感を持って、本格的に検討する必要があると考えます。一般的によく言われているカンファレンスの開始時間を診療時間内で行うことや、チーム主治医・複数主治医性の導入などは各科で行われ始めています。
産婦人科の検討では、医師間で時間外・休日労働時間にばらつきが多いことも分かりました(表④)。特定の医師に負担が集中している可能性があり、若手医師の負担軽減を考えなければなりません。当院は現状で宿日直許可が取得できておらず、まずは許可取得に向けてマンパワーの確保が急務です。医学生のリクルートに加えて、現職者が個々のライフステージに合わせて働き続けられるような職場環境作りも求められます。
さらに、タスクシフトについては、厚生労働省医政局の取り組みと並行し、当院においても医療従事者負担軽減/処遇改善委員会を立ち上げ取り組んできました。医療クラークの増員にて、多くの仕事を実際に行って頂いています。外来対応時間の縮減の成果はありますが、継続すべき問題点も残っています。医師不足で負担の多い部門には、特定看護師の養成も進めています。タスクシフトは有効であると考えますが、それだけでは根本的な解決策にはなりません。実現可能性が高く、医師の業務量縮小効果の高いものから積極的に取り組んでいくべきです。
以上、当院における医師の働き方改革への取り組みについて述べさせていただきました。医師の働き方改革を達成するには、医師一人一人が勤務環境を改善していく意識を持つことが重要であり、医師自身による勤務管理、勤務時間の縮減努力、業務と業務外の明瞭化についての意識改革が必要であると考えます。働き方改革がただの枷にならず、産婦人科医療がより良い方向へと向かうきっかけになることを期待します。