秋田県『秋田県における医師の
働き方改革への課題』
秋田県産婦人科医会勤務医部会担当
秋田大学医学部附属病院
清水 大
秋田県においては、「医師の働き方改革」に対して、まだ何の取り組みも始まっていないのが実情です。そこで今回は、秋田県の周産期医療の現状とそこから見えてくる「医師の働き方改革」への課題について述べさせていただきます。
秋田県における出生数は年々減少しており、2020年度の出生数は4,499人(里帰り分娩を含めた総分娩数は5,256件)でした。出生率は4.7で26年連続全国最下位という不名誉な記録を更新中であります。秋田県内には現在20の分娩施設がありますが、その勤務者は1施設を除いて、全て秋田大学の医局員となっております。医局員数は2016年頃までは順調に増加しておりましたが、定年退職者の増加などにより近年減少に転じております。
秋田県はスライド1のように8つの二次医療圏が設定されています。総合周産期センターが県央部の秋田市にあり、地域周産期センターが秋田市に1つ、県北部に1つ、県南部に1つ設置されています。その他、医療圏ごとに二次医療施設が1〜3施設ずつ設置されています。その他に個人開業施設が6施設あります。地域性や冬期間の交通の不便さ、病院設立母体の相違などのため医療圏の統合・集約化が進んでおらず、各地に点在する二次医療施設を少ない人員で何とかカバーしているというのが現状です。
スライド2は医療施設当たりに必要となる常勤医師数の試算です。B水準(時間外労働は年1,860時間まで)を満たすために、各医療施設当たりに必要な常勤医数は4.1人となり、5人以上の人員が必要との計算になります。2035年から適応される予定のA水準(時間外労働は年960時間まで)を満たすとなると9.2人、つまり10人が必要となります。秋田県内には常勤医数が4人以下の施設が11施設もあり、2024年までに何らかの対策を講じる必要があります。
大学病院と個人開業施設を除いた13施設における常勤医の総数は43人ですが、スライド3のように現状のマンパワーでB水準を達成可能な医療施設数は単純計算で10.6施設と試算され、つまり現在の13施設を10施設にまで減らす必要があります。
以上より、見てくる秋田県における「医師の働き方改革」への課題としては、まず第一に、集約化を含めた医療体制の再検討・再構築が必要と考えられます。これまでも何度か集約化の動きはありましたが、様々な事情により残念ながらまだ達成に至っていません。もう一つの課題は、圧倒的なマンパワー不足です。これを解消するため新規入局者の確保が最重要と考えています。