鳥取県働き方改革に関する取り組み
〜10大学タイムスタディから
みえたこと〜
鳥取大学
産科婦人科学分野
東 幸弘
日本産科婦人科学会は、年間500名の新規産婦人科専攻医確保を目標にかかげリクルート活動に注力し、2022年に初めて新規専攻医が500名を超えた。しかしながら一方で、女性医師の割合が高く、出産や育児によるキャリア形成の中断と各診療施設で当直できる常勤医師不足が問題となっている。2024年4月から適用される医師の働き方改革は、「勤務医の時間外労働の年間上限を原則960時間とする」という時間外労働上限規制(A水準)を基軸としているが、専門性の高い職種であることからただちに達成することは困難である。地域医療確保のために長時間労働が必要とされる医師は、年間時間外労働の上限を1,860時間以下(B水準)までは許容されるが、2035年にはこの暫定特例も終了しすべての施設でA水準を達成しなければならない。このハードルを超えることが果たして可能なのかを探るため、全国10カ所の大学病院に勤務する医師の勤務実態を調査したスタディがある。提出された任意の1週間の勤務時間を1年の労働時間に換算して評価した結果、10施設の時間外労働時間の中央値は1,720時間であったが、3施設において中央値がB水準である1,860時間を超過していた。オンコールの待機時間を時間外に含めずとも、10施設全体で約30%の医師がB水準を上回る時間外労働を行っているという実態であった。また、教育や研究など、自己研鑽との境界が曖昧な業務も多く存在することが明らかとなった。本検討から、各施設によって時間外労働の内容(いわゆる他施設でのバイトも含める)に大きな差があることが浮き彫りとなり、例えば学会が舵取り役となって時間外労働の在り方を一律に示すことは困難と思われる。大学病院という特殊な環境で働く医師は、まずは2024年4月までにB水準をクリアできるまでに時間外労働を減らす義務があるが、将来的なA水準達成のためには、各施設・地域で抜本的な「改革」を要するであろう。医師の健康を保つために時間外労働を減らさなければならない反面、医療水準と収入を維持しながら改革を推し進めるにはそれぞれの医療圏に見合った工夫が必要である。多職種へのタスクシフトや女性医師の働き方支援を上手に組み込んだ柔軟な対応が望まれる。
時間外労働には年間上限とは別の側面として、「連続勤務の上限が28時間」という課題も存在する。当直を勤務時間に換算すると、28時間連続勤務後は9時間のインターバルを確保しなければならない。これは他施設での勤務(バイト)にも該当するため、他施設勤務後に自施設で勤務できないというジレンマが生じる恐れがある。他施設での勤務時間を短縮することで解決されるが、収入の減少に直結する可能性もあるため、各施設で「宿日直許可」を取得することが推奨される。