岡山県岡山大学病院における
Dr.JOYを用いた勤怠管理の実際
岡山大学病院周産母子センター
鎌田 泰彦
「働き方改革関連法」の施行に伴い、岡山大学病院ではDr.JOY株式会社と「勤務管理システムDr.JOY」を共同開発し、2021年4月から運用開始いたしました。本システムの特徴は、医師が発信機(タグ)を常時携帯することで、出勤および退勤の時間が自動打刻されることです。さらに施設内には各所に受信機(レシーバー)が設置されており、何時どこにいたかがクラウド上に記録されます。
医師は、はじめにWEB上で週間勤務予定スケジュールを設定します。所定労働時間内(週38時間45分)はすべて業務とみなされます。所定労働時間外は残業か自己研鑽のいずれかとなります。そして残業と兼業(外勤)の総和が時間外勤務となります(スライド1)。医師は所定労働時間外が残業か自己研鑽かの自己申告を、後日WEB上で行います。なお何が残業で何が自己研鑽かの規定に関しては、各施設間で異なるものと思われます。
このようにして集計された当院のデータを呈示いたします。スライド2ですが、産科婦人科(24名)の2021年度A水準達成率(時間外勤務が年間960時間未満)は69.6%でした(兼業は含まれていません)。ちなみに全診療科(医科系,756名)の2021年度A水準達成率は77.2%でした。
次に時間外勤務、すなわち残業と兼業(外勤)に着目し、助教以上と医員とに分けて時間順に並べてみました(スライド3)。なお当院は既に「宿日直許可」を受けております。2021年12月から2022年2月の3カ月間の時間外勤務は、助教以上の全員がA水準を達成しました。その中でも時間外勤務の長い医師は、いずれも週末に「宿日直許可」のない兼業(日当直)をしていました。医員ではA水準を超過している割合が高いものの、もしもこれらの兼業先が「宿日直許可」を受けていればA水準に収まる可能性も考えられました。すなわち兼業先(医師派遣を受ける側)の「宿日直許可」申請により、派遣する側の医師の勤務超過が解消されることを示唆しています。
さらに助教以上の残業および兼業(外勤)の時間に、自己研鑽の時間を併記してみました(スライド4)。残業(および兼業)と自己研鑽の時間に一定の傾向は見られませんでしたが、これには役職や研鑽内容に加えて、育児や介護の有無、居住地などの条件が影響しているものと思われました。
以上より、「勤務管理システムDr.JOY」の導入により、使用者(病院)においては、適正で客観的な方法による労働者(医師)の勤務時間管理と勤務データ保存が可能になりました。労働者においては、院内滞在時間が自動的に記録されるので打刻忘れや煩わしさがなく、勤務場所表示により業務内容の事後確認が容易になりました。差し迫る「働き方改革関連法」の遵守に際しての本システムの有用性が示唆されましたが、「宿日直許可」申請の促進ならびに勤務スケジュール設定による時間外勤務時間の最小化は「医師の働き方改革」の本質とは程遠く、より一層の就労環境改善に向けた取り組みの必要性を再認識した次第です。