香川県における周産期医療体制および当院における現状

米澤 優

香川県香川県における周産期医療体制
および当院における現状

香川県産婦人科医会
副会長
香川県立中央病院
米澤 優

香川県は全国一面積の狭い県です。その点母体搬送は時間的に恵まれています。2021年度、香川県の人口は約94万人で、出生数は約6,300です。香川県内の分娩取り扱い施設は17施設で、内訳は周産期センター(総合周産期センター2施設、地域協力周産期センターは1施設)3施設、公的病院(国立、自治体立、厚生連など)7施設、私立施設(私立病院、診療所)7施設です(スライド1)。

スライド1

香川県全体の特に時間外労働の面から調査するため、県下の分娩施設17施設にアンケート調査し、16施設より回答を得ました。時間外分娩担当医は64名、医師一人当たりの年間分娩数は周産期センターで90人、一方私立施設では178人と他施設と比較してかなりのオーバーワークとなっていました(スライド2)。

スライド2

応援医師派遣依頼ありの11施設の状況を見ると、周産期センターではA1施設が医師一人当たりの分娩数144に対して、応援医師派遣依頼回数が少ないことと、私立施設で意外に少ないことが目立ち、一人当たりの年間分娩数はC1で285、C5で325となっていました。公立病院の依頼数が最多ですが、これは一つにはB1、B2施設の常勤医が一人であるなどの理由があります(スライド3)。

スライド3

このような状況で令和6年4月までにA水準、(大学はB水準)を満たすことができるか、についての現況についての回答では、A水準については可能、可能見込みを含め8施設、一方不可能が8施設あり、不可能の理由はほとんどスタッフ不足で、とくに周産期施設はすべて不可能との回答でした。宿日直許可は6施設で取得すみでした。一方で取得のメリットがわからないとの回答が2施設ありました(スライド4)。しかし、A1、B1施設は取得すみであるが、形式だけで、現実的に無理ではないかという回答でした。

スライド4

香川県立中央病院は、全ベッド数533、非周産期センターです。分娩数は年間約400例、婦人科癌は年間約80例、帝切を含む手術件数500件程度の規模です。常勤は専攻医を含め9名で、男女比は3対6、平均年齢は約50歳です。宿日直許可は取得しています。勤務体制は、時間外分娩は原則オンコール、子育て中の女性(1名)は当直のみで、当直翌日の勤務緩和は制度として確立しており、現実、実施できています。時間外労働時間は、2021年度、産婦人科は年間一人当たり、平均483時間でした。

まとめ

他県同様、医師数の不足を訴える施設が大半でした。香川県においては、初期研修医に働きかけて産婦人科を専攻してくれても、地方県の悲しさ香川県で就労する産婦人科医の増加に簡単には結びつかない背景があります。2024年4月までにA水準の達成見込みが8/16施設との回答です。宿日直許可の取得が時間外労働時間の減少への重要な一手段であることは理解できますが、需要と関連大学からの派遣医師の供給を考えると、香川県では結びつきにくい面があります。医師偏在の現状で供給の多い都会と、地方では状況が異なります。

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