福井県福井県の現状と福井大学病院における働き方改革への取り組み
福井大学産科婦人科
品川 明子
2024年4月からスタートする医師の働き方改革に向けて、福井大学病院とその関連病院の現状と取り組みについてご紹介いたします。
(スライド1)福井県における分娩取り扱い施設は全部で14施設あり、特徴としては、周産期センターが嶺北(県の北側)に偏っていること、分娩可能なクリニックが年々減少傾向であることが挙げられます。
(スライド2)総合周産期センター2施設と、関連病院6施設の診療体制の概要をお示しします。いずれの施設でも宿日直許可を取得しています。総合周産期センターは10名以上の当直担当可能医師がおりますが、他の6施設は6名以下であり、当直可能医師の平均年齢は50歳前後、宅直体制をとっている施設が4施設となっております。5施設には大学からの当直応援を派遣しており、特に年間1,100件の分娩のあるA病院には、約5回/月の派遣をしています。
(スライド3)福井大学病院における働き方改革についての取り組みについてご説明します。地域医療の確保という側面が強いため、連携B水準(派遣先との通算で年1,860時間までの時間外労働)となっています。当院は、勤務時間の客観的な把握のため、Dr.JOY(ビーコン)を導入しており、時間外の在院時間について、各自が業務と自己研鑽に区分して入力しています。また、これまで主には裁量労働制でしたが、今後は教授、准教授を除き、変形労働制に移行して対応することとなっています。また、長時間労働医師に対する疲労蓄積状況調査を実施し、面接指導体制を整備しております。タスクシフティングも少しずつ進んではおりますが、医師以外の職種もマンパワー不足が否めず、なかなか難しいのが現状です。
(スライド4)現在大学病院は常勤医16名でうち医員が6名、当直担当医師が13名ですが、そのうちの2名は専攻医であるため単独当直は行っておりません。標準的な当直回数は、月に大学の平日当直は2回、休日の日直・当直が1回ずつ、外勤先での当直が2〜3回/月、休日の日直・当直が1回/月となります。外勤先での休日日直・当直は、地域医療を担っている常勤医のサポートとして、大学から50〜100km程度離れた施設へ多くは自家用車で運転して向かっているため、移動の負担も加味する必要があります。
ある1カ月の超過勤務時間における業務と自己研鑽の区分を、専攻医と専攻医以外でお示ししますと、自己研鑽の時間は変わらず、業務時間は専攻医が3倍以上で長くなっていること、全体的には業務と自己研鑽の区分の判断には個人差があることもわかりました。
(スライド5)取り組むべきこと、課題はいまだ山積みであり、特に今回の懇話会で、当院の体制整備が遅れていることを認識できました。日々の診療では、確実な休息が確保できるようシフト体制になるため、1日2回(朝夕)の患者情報の正確な伝達が重要となり、現在も徹底しています。また、当直翌日の業務軽減を図るには、外来や手術日程を加味した勤務体制を組む必要がありますが、外勤の当直との兼ね合いで確保が難しい場合もあります。宿日直許可中に発生したイレギュラーな業務に対するインターバル9時間確保、代償休息の調整等、現在まだ試行錯誤ですが、いずれにしても、本来の意味通り、我々の心身にプラスなものになって欲しいと考え、引き続きすすめてまいります。