愛知県令和6年4月から始まる時間外労働の法規制に関する愛知県下勤務医の意識調査
愛知県産婦人科医会理事
一宮市立市民病院診療局長
佐々 治紀
本稿では、愛知県下の勤務医に対して行った、時間外労働の法規制に関する意識調査の結果を報告します。調査対象は、大学病院・総合および地域周産期センター・その他の総合病院の勤務医344名です。調査期間は、令和5年7月上旬から8月中旬です。回答者の属性をスライド①に示します。
<質問①>外勤での時間外労働が、自施設での時間外労働と合算されることを知っているか?‥89%がYes。
<質問②>時間外労働と自己研鑽の区別が明確と思うか?‥84%がNo。
<質問③>宿日直許可のない施設での当直代務に行くと、翌日の自施設での勤務が制限さることを知っているか?‥83%がYes。
<質問④>時間外労働の法規制に伴って危惧されることはありますか?‥収入の問題を心配されている先生が多く、特に若い世代で多いようです。指導医の先生方は、指導内容の低下を心配されています(スライド②)。
<質問⑤>時間外労働の適正化のために必要と思われることはありますか?‥多くの先生が、タスクシフト・意識改革・地域内調整を選択されました(スライド③)。
<質問⑥>時間外労働の法規制により改善される、あるいは評価できると思われる点を挙げてください。‥全年代を通してプライベートの時間増加を選択されました(スライド④)。
<その他の意見(自由記載)>「若手医師はバイトが減り、時間的なゆとりができても金銭的なゆとりがなくなる。」「外勤の制限により収入が減るならば大学病院に勤務する医師は減少すると思われる。」「ドライボックスの練習や専門医試験、論文作成、学会発表は研鑽(ただ働き)と考えられているが、病院の利益にもなるため、インセンティブをつけて若者に投資すべきであり、勤務時間として扱うべきである。」「指導医が若手の論文や学会発表の指導を行うのも自己研鑽とされているが、承服しがたい。」「自己研鑽という扱いの時間外勤務が増えると思う。」「分娩施設の集約化(施設当たりの分娩が1,000〜2,000件以上など)が進めば労働環境は著明に改善し、医療者の負担が減りながら緊急対応がしやすく、無痛分娩の普及も進むと考えますが、分娩がビジネスとして成立する限り困難なのだろうと感じています。」等、多くの意見をいただきました。
<まとめ>時間外労働の法規制に対する認知度は高かったですが、時間外労働が減っても収入が確保される体制・自己研鑽の取り扱い・時間外労働の評価方法・周産期医療の集約化など、多くの課題があり、引き続き検討していかなければならないと思われます。