三重県管理者・指導者に聞く医師の働き方改革への取り組み
「三重県における医師の働き方改革への取り組み」
三重県産婦人医会副会長
市立四日市病院産婦人科部長
長尾 賢治
三重県下の周産期医療の現状ですが、総合周産期が2施設、地域周産期が3施設、一般病院5施設のうち分娩を取り扱っている病院が2施設、分娩の受け入れを中止した病院が3施設あります(スライド1)。
三重大学関連病院における総合・地域・一般病院における集約化の推移ですが、この十数年の間に、一般病院において、羽津医療センター、鈴鹿中央、松坂中央の3施設で分娩の受け入れを中止しました。また三重県南部の東紀州地域の地形は山間部で過疎地が多く、志摩病院、尾鷲総合病院、紀南病院の3施設が派遣中止となっています。一般病院において分娩受け入れを中止した施設での人員の削減を行い、継続している2施設での人員の増強をはかり、また、総合および地域では、すべての施設において増員がなされています(スライド2)。
三重県の人口は45%が北勢地区に集中しており、産婦人科医が限られた中、北勢地区の診療体制を充実させるために、市立四日市と県立総合の相互支援体制の構築を行いました。
相互支援のメリットとして、「①マンパワーの必要なときに、より多くの医師が確保できる、②よりレパートリーの広い産婦人科研修が可能となる、③医師の待遇がより良くなる」などがあげられます。現在では、この相互支援体制は、北勢4病院に拡大し、各々の医師が相互に勤務する事が可能となっており、手術・当直・検診など、幅広い業務に渡り、協力体制を築き上げています(スライド3)。
しかしながら、相互支援体制を充実させても、根本的には医局員の充実が必要かつ急務でありました。「教授の最重要任務は産科婦人科入局勧誘」という池田教授の信念の下、医局全体において積極的に勧誘に努めた結果、教室員は、2011年18人だったところが2021年には40人、関連病院では37人が76人、医局全体においては55人から116人と倍増に至りました。三重県の関連病院においては、2012年からは、朝8時から約30分間にわたって、8施設でテレビカンファレンスを行っています。三重県全体で症例の共有がなされ、診療レベルの向上にもつながっています(スライド4)。
三重県における「宿日直許可」取得状況ですが、県内の関連病院において、概ね取得済であり、また、未取得施設も取得予定です。大学病院からの当直支援なくして、総合周産期や近隣の地域周産期は成り立たず、また、県内の分娩の半数以上を診療所が担っており、こちらも大学からの当直支援なくして成り立ちません。周産期医療を崩壊させずに水準を満たすための宿日直許可取得は不可避であります。宿日直許可は、日本の産科医療維持のための苦肉の策であるが、「医師の働き方改革」の基準をクリアするために、医師の過酷な勤務を今後いっそう「見えない化」となる事が懸念されます(スライド5)。
まさに宿日直許可のジレンマに直面しており、真の「働き方改革」への第一歩であり、更なる労働環境の整備に努めていかねばならない。