■当直や出張などで家を空けるときの対応
■子どもを皆で見守り自立した人間に育てる
■家事は上手に省力化
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Lさん
当直の日は夕方から実家の母に来てもらい保育園のお迎えや夕食などの家事、寝かせつけをしてもらい、翌日保育園まで送ってもらっていました。夕方当直明けでようやく病院を出てこどもと会うまでがとても長く感じられました。
Kさん
私は母が遠方で高齢のためこどもの世話を頼めず、もっぱらシッターさんが頼りでした。でも保育料がかさんでしまい当直料より高くなる月もあるほどで、何のために働いているのかと考え込んでしまうときもありました。
Mさん
うちは夫と二人三脚で乗り切りました。夫も産婦人科医でしたがお互いの当直が重ならないようにし、帰宅までの間はシッターさんを頼みました。当直が多いときは半月くらいはお互い顔を合わせない状態でしたがメールなどでこどもや家の様子などこまめに連絡をとりあっていました。
Nさん
夜間や休日に働くのは男女問わず、子どもがいてもいなくてもそれなりの負担になります。人手が足りず50歳代、60歳代の先生でさえ月に何回も当直しているのに、自分だけ子育て中だからといって当直を免除してほしいなど、とても言い出せない雰囲気でした。自分がやらない分、他の先生の当直回数が増えると思うと・・・まずは月1回でもいいから、といわれて産後6ヶ月から当直に戻りました。
子どもは実家の母に預けたのですが、意外にいい子にしていたようで、また預かってあげるといわれ、月2回だけ当直することにしました。はじめは、「子どもが今頃どうしているか」と気になっていましたが、自分がずっといなくても実は何とかなっている、ということがわかり、安心して勤務できるようになりました。母乳だったのですが、当直中は仕事の合間に搾乳して冷凍し、翌日家に持ち帰りました。幸い勤務先では当直明けは昼で帰宅できる体制になっていたので、子どもが離乳する前でも当直できてよかったです。
Oさん
「いいよね〜、女医さんは当直免除で」とか「子持ちの女医さんは半人前の戦力だ」などといわれて悔しい思いをすることも少なくありませんでした。
でも当直に入れば、32時間以上の連続勤務になり、その間ずっと家を空け、家事もたまるし子どもにも会えず様子が心配だし・・・当直はできないなぁ と思っていました。そして、そのために一段低く見られてもしかたがないかもしれない、とあきらめていました。 しかし、そもそもそんなに長時間の連続勤務ができなければ常勤と認めない! 連続勤務ができなければ非常勤やパートで! という制度のほうがおかしいと私は思います。
けれど現実は、常勤で長く勤務しなければ責任あるポストに就けず、言いたいことも言えないままです。いつまでたっても勤務環境は改善しません。今のシステムの枠組みのなかで女性医師が力をつけていくためには、やはりできるだけ常勤にとどまり、時間内にきちんと仕事を遂行すること、やりくりしてできるだけ当直や休日日勤、救急対応などの業務を行うこと、仕事に責任をもつ態度をはっきり示すことではないかと思い、週に1回は当直も行っています。
Pさん
当直をするとなると、その間、家事の段取りをしておかなければなりません。親と同居していれば食事も洗濯もある程度一緒にお願いできてしまうのですが、核家族ですとそういうわけにはいきません。一番苦労したのはやはり食事です。シッターさんはこどもの世話をしてくれても家事はしないという契約になっていることが一般的です。朝、家をでるときにその後の4食分の段取りをつけていくことになります。下ごしらえをしておくのは面倒ですが、休日などにまとめて作っておき冷凍しておきます。
また、帰りが遅くなりそうなとき、当直の日の夕食などで温かいものをすぐ食べられるようにするには工夫が要ります。保温調理器(シャトルシェフなど)がとても便利で、カレーや肉じゃが、煮込み料理などを朝作っておくと夕食時にはまだ温かいです(オススメです!)。
炊飯器のタイマーをかけておき、おかずと汁物を保温調理器2台を使って朝のうちに作っておくと帰宅後の慌ただしい時間にゆとりができます。
電子レンジと炊飯器、保温調理器は我が家に欠かせません!
Qさん
仕事をしながらどうやって家事をこなしているのか? とよく聞かれます。食器洗い機、浴室乾燥機など使える家電製品を駆使し、なるべく時間を有効に使えるよう、いろいろな家事は同時並行でやっています。たとえば料理でも魚を焼きながら味噌汁も作り、隣でおかずも作り、ということで比較的短時間に済ませます。食事を作りながら、合間に使った調理器具の後片付けも行います。洗濯は入浴と同時に行い、夜のうちに浴室乾燥機で乾かして、朝には取り込んで収納してしまいます。時間に余裕があるときには外に干すこともありますが帰りが遅いと洗濯物もすっかり冷えてしまいます。
掃除も時間がないから週に1回すればいい、と思われがちですが、実はこまめにやっておいたほうがかえって手間がかからないものです。子どもがいると特に家が汚れますので放置しておくと汚れが落ちにくくなります。手間を惜しまずに短時間で簡単でよいのでこまめに掃除しておくことで、休日の掃除も時間がかからず、気持ちよく過ごせてストレスもたまりません。
同僚のなかにはハウスクリーニングを週1回業者に頼んでいる人もいますが、家事の外注によって時間にゆとりができて楽になったと喜んでいました。
Rさん
自分だけでなく家族のスケジュールも管理するのは結構大変です。うちでは家族カレンダーというのを作ってネット上でお互いが見られるようにしています。夫の出張、自分の当直、子どもの学校や保育園の行事などが一覧になっているので、忙しいときにも大切な用事を忘れずに済みます。明日は子どもの園の遠足なのでお弁当を持たせる、学校にPTA行事の出欠など提出物の締め切りがある、塾の講習申し込みの受付期間、などこまごまとした親として忘れてはならない用件があります。仕事でもカンファレンスや会議、学会の演題締め切り、受け持ち患者の手術予定などあるので予定表はいつもいっぱいです。本当はマネージャーさんがほしいくらいですが・・・携帯にスケジュール予約をしておくと設定時間にアラームが出る(マネージャーさんが呼んでくれる)ので便利です。
特に予定のない休日などはかえってだらだらしてたいしたことができずに終わってしまうこともあり、時間に追われていることがかえって効率よく過ごせていいかも、と最近は考えるようにしています。
私自身は一日でも早く復帰するつもりでした。ところが、産後に手伝いに来ていた母に「こんなに小さいうちから保育園に預けて働くなんて、自分のことばかりでなく子どもの立場も考えたら」と言われて考えこんでしまいました。小さいうちからの集団生活で子どもの情緒発達は大丈夫なのだろうか、親子の絆がうまく築けるのかと不安なことばかり・・・。
そんなとき、働きながら子育てしてきた医局の先輩のE先生が相談に乗って下さり、自宅に招いて私の悩みを聞いてくれました。先生のお子さんたちにも会いましたが、ママのことが大好きで楽しそうにいろいろとお手伝いをしてくれていました。私もE先生のように子育てしながら仕事もできるといいな・・・と目標ができました。
やってみないとわかりませんが、がんばってみようかな、という気になっています。
D先生はお子さんが保育園生活で淋しい思いをしないか心配だったようです。しかし話を聞くと母親自身に子どもと離れる寂しさや子育ての不安があると思われました。一般に、子どもは母親が育てるべき、という考えがまだ根強く、子どもに何かあれば母親の責任にされがちです。
そういう社会通念のなかで、小さい子どもを預けて勤務を続けていくにはそれなりの覚悟が必要で、そのハードルを越えられなければ離職や転職につながってしまう可能性があります。現在子育てしながら働いている先生方も、いろいろな思いを抱えて、それでも自分の心の中で何とか折り合いをつけて仕事をしていることと思います。
ちなみに私の場合、子どもを他人に預けて自分の仕事を全うしていこうと考えたのは大日向雅美氏の著書『母性愛神話の罠』(日本評論社)を読んでからです。大日向氏は母親だけでなく社会で子育てを支えていく必要性、それにより親が子育てに愛情と喜びをもてると指摘しました。他にも本やネット、人から話を聞くなどでいろいろな考え方を知ると、自分だけで育児を抱え込まなくていいんだと心が軽くなることでしょう。
Fさん
うちの子どもたちはゼロ歳から保育園育ちですが、幸いグレることもなく素直に育ってくれています。子どもとはなるべくコミュニケーションをとるよう、愛情と関心をできるだけ示せるよう努めてきました。どんなに忙しい日であっても(当直日以外は)寝る前にその日のできごとを親子で語り合う時間を持つようにしました。
週末の休日には外遊びにつきあってなるべく子どもたちと過ごすようにしました。そうした機会には写真を撮っておき、「家族の日記帳」に貼り、字が書けるようになってからはそれぞれの感想も書きあうようにしていました。おかげで平日ずっと一緒に過ごせなくても家族の会話も比較的多かったように思います。子どもたちも自立し、もう一緒に出かける機会も少なくなりました。「家族の日記帳」 は今でも我が家の大切な宝物です。
Sさん
60歳代で有床診療所の院長をしております。私自身は子育てしながら診療を続ける苦労を経験してきました。ぜひ子育て中でも意欲をもって働いていただける医師や助産師に利用していただこうと院内保育園を開設しました。ただ託児ルームがあればいい、というのではなく、子どもの成長にとって適切な環境が提供されなければ大切な子どもを預ける気にはなりません。ですから十分な広さ、日当り、庭を確保し、経験のある保育士さんを集め、病児保育も受け入れできるようにしました。保育士さんの応募も予想以上に多く、優秀な職員が採用できました。
親が安心して預けられる、子どもが楽しく過ごせる院内保育園ということではじめのうちは経費もかかりましたが、おかげでスタッフも増え、定着率も高まりました。分娩も増えてきており、今では運営コストも負担にならなくなってきました。 「他の施設もいろいろ検討したけれど、ここに就職したのは保育園が良かったから」とスタッフが言ってくれるので開設して良かったと思っています。
今では医師になった娘も診療の手伝いをしているので孫が院内保育園を利用しています。おかげで仕事が続けられる、と娘から感謝され、孫も「保育園楽しいね」 と喜んで友達と楽しく過ごしています。
Xさん
妊婦さん、患者さんや家族とのちょっとしたやりとり、スタッフとのささいな行き違いなどで嫌な気分になることがたまにあります。帰宅してからもそのことが心に引っかかり、なかなか気が晴れないことも。そんなとき、家族と話をしているといつの間にか気持ちがラクになることが多いです。逆に家でのストレスは病院に着いて診療を始めると気分スッキリ。
この切り替えができるのは大きなメリットです。私の場合は家と仕事と両方あるからこそ両方ともうまく長続きしているように思います。
以前一人暮らしだった頃は飲みに行ったり、お菓子を食べたりしてストレスを発散することが多くメタボ体型だったのですが、今は忙しく動いているせいかスリムにもなりそれも嬉しいです。
Yさん
保育園のお迎えはシッターさんにお願いしているのですが、それでもなるべく帰りが遅くならないよう、仕事は効率よく進めるように心がけています。以前は何となく医局に遅くまで残っていたことも多かったです。学会発表の準備などもぎりぎりにならないとやる気にならなかったり、机の上もけっこうごちゃごちゃだったりでダラダラ過ごしていました。
今では 「子どもが熱を出したら時間がなくなっちゃう!」 と思うせいか、やるべきことはなるべく先延ばしにしないようにしています。
家でも平日は時間制限があるので家事はすべてやろうと思わず、これだけは、というものを優先しています。それでも家族が多いとその分食事や洗濯なども大変で、たまってしまわないようにサボらずがんばっています。
たまの休日には時間があっても意外にだらだらして夕食の準備もできずにお総菜を買ってきたり店屋物や外食で済ませたりのことも少なくないです。もともとあまり勤勉でないので(笑)。もちろん人によるのでしょうが、私は時間制限があって追い立てられないとなかなか動けない性格なのかもしれません。
家庭と仕事、どちらも60点くらいですが、それでも合わせて120点ならいいかな、と自分なりにささやかな満足感があります。
Kさん
うちは夫も産婦人科医で、夫婦で同じ病院に勤務しています。お産が多いのですがまだ子どもが0歳なので私は当直ははずしてもらっています。そのかわり、休日の日勤や残り番、オンコールなどには積極的に参加しています。オンコールで呼ばれたときは、夫、あるいは夫がいない場合は子どもを義母にお願いしています。幸い義父母の家はすぐ近くなので夫が当直のときにはそちらに泊まり、緊急帝王切開のときなどは子どもを義母にみてもらって私も応援に行くなどしています。夫はとても助かると感謝してくれ、私も大好きなお産の仕事ができて嬉しいです。
一番困るのは子どもの急な発熱のときの対応です。妊婦さん、患者さんから『是非先生に診てほしい』と指名していただくことが多く、外来診療もなるべく休まないようにしています。そのため、前日より出費覚悟でシッターさんに一日お願いする手配をするか、もしくは比較的近くに住んでいる義姉に頼み(そういうときには快く預かってくれるので)、何とか休まずにすみ、助かっています。家族みんなの協力がないと働けないと日々感じています。
Lさん
私の場合は夫が単身赴任しており、子どもが小さいので実家の近くに転居し、そこから通える病院に勤務することにしました。両親も自分の仕事があるため、そうそう孫の世話にかかり切りにはなれませんが、かえって過保護にならずにすんでよかったと思っています。両親になるべく負担をかけないように普段の保育園の送り迎えは自分でやっていますが、オペで遅くなりそうなときや、子どもの急な発熱のときなどは両親が協力してくれることが少なくありません。
また同居ではないのですが、実家がすぐ近くなので、私が遅くなるときには実家のほうで子どもの食事などを済ませてくれていて、私も帰宅後、実家で夕食をとりそのまま泊まっていくこともあります。もちろん回数が多くなるとお互い負担になってしまうので甘えすぎないように心がけています。
夫が家にいないため当直は難しいのではずしてもらっていますが、土曜や祝前日なら実家に預ければなんとかなるので、月1,2回ではありますが当直にも参加しています。自分だけ「私は当直できない」と言い張るのは簡単なことですが、他の先生もさまざまな事情をやりくりして当直していることを考えると、自分なりにできる範囲で参加するべきと思っています。私の場合、家族もこの考え方を理解してくれサポートしてくれています。