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第3章 服用中の定期検査の実施手順
    (2回目以降の処方時)

1.定期検査項目
 (1) 服用開始1ヶ月検診
 (2) 3ヶ月毎の検診
 (3) 6ヶ月毎の検診
 (4) 1年毎の検診
 (5) 臨床検査値への影響
 (6) 服用を中止する場合
 (7) OC中止と月経周期及び妊孕性の回復

 

1.定期検査項

 OC服用による副作用の出現をチェックするため、定期的に問診と検査を行う必要がある。その際には、OCの副作用を念頭においた計画的な定期検査を行う。

 検査の時期としては、少なくとも服用開始直後は1カ月目、3カ月目、以後は3ヵ月毎に検診し、早期に副作用の発生を知るために十分な問診を施行すべきである。臨床検査は検査項目に応じて、6カ月〜1年毎に実施する。また、婦人科的検査及びSTD検査は、服用後6ヶ月毎に行うことが望ましいが、間隔や内容は、問診等による症状や個人の性行動に応じて、服用者とも相談し、個別に医師が必要性を判断する。なお、耐糖能異常のある人では定期的に血糖値等の検査が必要である。

表9.ピル服用中の定期検査

検診時期

診 察 
臨床検査

服用開始1カ月後

保健指導および服用状況のチェック

問診、血圧測定、体重測定

 

服用開始3ヶ月後及び以後3ヶ月毎

保健指導および服用状況のチェック

問診、血圧測定、体重測定

 

服用開始6ヶ月後及び以後6ヶ月毎

保健指導および服用状況のチェック

問診、血圧測定、体重測定、身体的診察、 婦人科的診察、乳房検診

血液学的検査
血液生化学検査
STD検査
(クラミジアなど
血液凝固系検査
(血栓症のリスクが高いとき)

服用開始1年後 及び以後1年毎

保健指導および服用状況のチェック

 

子宮頸部細胞診

 (1) 服用開始1カ月検診

 OCの服用開始1カ月後に問診を中心とする検診を行い、服用状況や性器出血、消化器症状等の内服に伴う異常の有無を聞く。

 (2) 3カ月毎の検診

 OC服用開始後は3カ月毎に、特に副作用の発生を念頭においた問診を中心とする検診を行う。

 (3) 6カ月毎の検診

  血液学的検査(赤血球、白血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板)、血液生化学検査(GOT、GPT、コレステロール、中性脂肪など)、STDの検査(クラミジアなど)、血液凝固系検査(血栓症のリスクが高いとき)、乳房検診を6カ月毎に行うのが望ましい。

 (4) 1年毎の検診

 子宮癌に対する細胞診は、少なくとも毎年1回に実施することが勧奨される。また、視野や視力の変化を訴える場合に、直ちに眼底検査、頭部CTなどを実施する。

 (5) 臨床検査値への影響

 含有するエチニルエストラジオールの作用による血清蛋白(コルチコイド結合性グロブリン、サイロキシン結合性グロブリン等)の増加により、総コルチゾール、総T3、総T4の上昇がみられることがある。また、遊離型は変化しないとされている。これら検査値の判定に際してはこれら本剤の影響に注意すること。

 (6) 服用を中止する場合

 OC服用による副作用として重篤なものは、静脈血栓塞栓症、心筋梗塞などの心循環器系の異常、ホルモン依存性の腫瘍、肝胆系の異常、糖代謝・脂質代謝の異常などが考えられる。これらの副作用は、場合によっては生命に関係する場合があるので、十分な注意が必要である。

 服用中に異常が起こった場合あるいは定期検査でこれらの出現が疑われたら、服用を中止するとともに必要な検査を実施して、異常とOC服用の関係を精査すべきである。OCの副作用に関係した症状、状態(表10)や異常検査所見(表11)が認められた場合および原因不明の症状が発生した場合は直に服用を中止させる。特に、血栓性静脈炎又は血栓塞栓症の初期症状が発生したときには、注意が必要である。

表10.服用を中止すべき症状又は状態

服用を中止すべき症状
疑われる疾患

片側または両側の下肢(ことに‘ふくらはぎ’)の痛みと浮腫 

 血栓性静脈炎

胸痛、胸内苦悶、左腕、頚部等の激痛

 心筋梗塞

突然の激しい頭痛、持続性の頭痛(偏頭痛)、失神、片麻痺、言語のもつれ、意識障害

 出血性・血栓性脳卒中

呼吸困難(突然の息切れ)、胸痛、喀血

 肺塞栓

視野の消失、眼瞼下垂、二重視、乳頭浮腫

 網膜動脈血栓症

黄疸の出現、そう痒感、疲労、食欲不振

 うっ滞性黄疸、肝障害

長期の悪心、嘔吐

 ホルモン依存性副作用、
 消化器系疾患

原因不明の異常性器出血

 性器癌

肝臓の腫大、疼痛

 肝腫瘍

10

体を動かせない状態、顕著な血圧上昇が見られた場合等

 静脈血栓症への注意

表11.服用を中止すべき他覚所見、検査所見

 

  1. 血圧の上昇、
  2. AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇
  3. 理学的所見の異常、
  4. 子宮の増大、
  5. 乳房腫瘤の出現、
  6. 貧血の出現、
  7. 出血・凝固系検査の異常、
  8. 性器癌検査の異常、
  9. 体重の急速な増加、
  10. 血中脂質の増加、
  11. 原因不明の異常性器出血

 一方、OC服用中には、しばしばホルモン依存性の比較的軽度な副作用が出現する。これらの副作用はいずれも軽度のことが多くいので、少なくとも3周期程度は投与を継続して経過を観察し、症状が強い場合には服用を中止する必要がある。

 (7) OCの中止と月経周期及び妊孕性の回復 

 正常の月経周期を有する女性であれば通常はOC中止後5週以内に月経がみられる。月経の再来は、国内の治験では3ヵ月以内に90%以上、外国では95%以上認められたとの報告があるで月経再来が認められれれるので、3ヶ月経過しても無月経の場合には、妊娠、post-pill amenorrhea(OC服用による無月経)又は閉経などを疑い検査が必要となる。また、妊娠を希望する場合は、服用を中止して月経周期が回復するまで避妊させることが望ましい。

 

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