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■長期的な視点で自分のキャリアについて考えていきましょう。


  • 生まれたばかりの可愛らしいこどもと過ごしていると仕事への復帰をためらう気持ちになりがちです。でも 自分の仕事が職場や社会で果たしている役割を考え、目先のことだけにとらわれて退職や転職するのは、もったいないことです。職探しが厳しい今日、再就職できたとしても条件は退職前より厳しくなってしまうことが多いものです。平均寿命がおよそ90歳の時代、長期的な視点で自分のキャリアについて考えていきましょう。
  • こどもを預けて働く場合には、身内にお願いする方法、保育園やシッターさん、保育ママなどの保育サービスを利用する方法があります。
  • こどもを預けて働くのはかわいそう、と考える人もいますが、母親一人が常に育児を抱え込む必要はありません。保育サービスを上手に利用することで、親子ともにさまざまな人と接し豊かな人間関係を育むこともできるのです。
  • 親など身内に保育を任せる場合、感謝の気持ちをなるべく表現して相手の事情も考慮し、押し付けにならないように。
【職場復帰の準備】 【産後の復帰】
復職場からのメールが心の支えに New
Kさん

 私今までお休みしたことがなかったので、産休、育休に入ることで職場から取り残されないか心配でした。そんなとき、仲の良い同僚から、ときどきメールがあり嬉しかったです。ちょっとしたできごとや、講演会での興味深かった話題など知らせてくれたので、自分のことを気遣ってくれていると思い、心強かったです。復帰のときもメールでいろいろな手続きなど問い合わせできたので助かりました。

復帰の時期が迫る中、あせりと葛藤でいっぱいになりましたが・・・。
Aさん

 私自身はもともと子どもがほしいと思っていたわけでなく、ずっと仕事だけしていくつもりでした。でも実際に自分の子どもを腕に抱いてみると、もう可愛くて・・・「ずっと一緒にいたい」 という気持ちになりました。他人に預けて働くなんて考えられず、職場に戻る気がなくなってしまいそうです。この子の笑顔も、初めて歩く様子も、自分でひとつひとつ見届けていきたい、復帰の時期が迫っていくなかで、追い詰められるような日々です。
医局には子育てしながら働いている先輩はなく、相談する先もありません。そんな中、医局長から電話があり「休んでいた分、しっかり働いてもらうよ」 と言われ、こちらの様子を察したのか、「どう、無理そうなら助教のポストは他の人にまわすから退職にする?非常勤で女医さんをほしがっているところもあるし・・・」 ということ。せっかく頑張ってきたのに・・・という気持ちもあるのですが、このまま子ども過ごしていたい気持ちもあって・・・認可保育園にも入れず、気持ちがくじけてしまいそうでした。そんなとき、このサイトを知って、多くの先輩や仲間ががんばって仕事を続けていると思い・・・自分も細く長くでも辞めずにがんばっていこう!と勇気がもてました。

今は週2回の非常勤、将来はお産の現場に復帰を希望していますが・・・。
Bさん

 「子どもを他人に預けてまで仕事をするなんて、孫なんだから自分たちがみていてあげる」 と義父母に言われ、週2回、非常勤でクリニックの外来の仕事をしています。子どももまだ小さいし、非常勤でもそこそこの収入にはなるので、今のペースでもいいかな、という気持ちはあります。でも、専門医取得にはあと1年研修しなければならず、このままでは試験が受けられません。子どもが大きくなったらまた研修指定施設で働きたい、という希望はあるのですが、常勤で当直をして長時間働く、というのは自分にはできそうもありません。
 夫は他科の医師なのですが救急が多く、ほとんどサポートは得られず、「君が家にいてくれると助かる、子どものことはよろしく」 というタイプです。お産の現場にできれば戻ってみたい、という気持ちもあるのですが、中途半端に戻ってもかえって迷惑をかけそうだし・・・子どもが何歳くらいになったらどのくらい自分の時間ができるようになるのか・・先が見えない辛さがあります。
身近に相談する人がいず困っていました。女性医師メーリングリストがあること知り、ぜひ参加して相談してみようと思っています。

家事も育児も仕事も中途半端になってしまうのではないかと不安です。
Cさん

 「産むより育てる方が大変よ」 と先輩ママから言われてはいましたが・・・わけもわからず泣き続ける、夜も間断なく起こされる、赤ちゃんが寝ている時間にたまっている家事をしようと思っても、洗濯物はたまり放題、部屋は散らかったまま・・・こんなに大変とは思いませんでした。
 独身の頃、当直が忙しくて寝られない日が続いたこともありましたが、帰宅してから一日ゆっくり寝ればまた元気になって仕事に行けたものです。でも子どもが産まれてからは、常に赤ん坊の世話のために拘束されているようで・・・夫がいないときにはお風呂さえゆっくり入れず、いつも追われている感じです。せっかく育休を6ヶ月もらって4月から保育園入園も決まったのですが、身心とも今から疲れていて復帰なんかできるのか、家事も育児も仕事も中途半端になってしまうのではないかと不安でいっぱいです。
 そんななか、先輩の体験談を読んでいろいろな対処法があるんだなぁ とほっとした思いです。ぜひ参考にさせていただこうと思います。

仕事との両立で充実した生活を取り戻しました。
Dさん

 上の子の時は産休だけで復帰したのですが、二人目で保育園に4月でないと入園できないためやむなく育児休暇を4ヶ月取得しました。せっかくだから子どもとゆっくり過ごそう、家の片付けでもして、と思っていましたが、実際はたいしたことはできませんでした。
仕事があるときは家事も効率よくやっていたのですが、休みだと思うとだらだらとしてしまい、かえって夕食の準備もできずにお総菜を買ってきて済ませる日も多かったりして・・・子どもと過ごしていてもビデオに上の子のお守りをさせて(ビデオを見せておくということ)家事をしている時間が長くなるし、赤ん坊の世話をしていると上の子がわざとぐずるので叱ることも多くなり、何のための育児休暇だったんだろう、といらいらすることもありました。
 今は職場復帰して、親子ともども忙しいけれど規則正しい生活に戻っています。保育園に子どもたちを預けて病院に着くと、何だかほっとするようで・・一日仕事をして、家に帰ってからの子どもと過ごせる短い時間くらいはなるべく優しいママでいるよう頑張っています。

実の親に甘えて育児をお願いしていた自分に反省です。
Eさん

 まだ保育園に入れなかったとき、そして急に熱を出して登園できないときや、体調が悪くなってお迎えにいかなくてはいけないときなど、核家族だったので、1時間ほど離れたところに住む実家の母に子どもの世話をお願いしていました。仕事が忙しいときや夏休みなどは数週間ずっと預けたままのこともありました。
当然自分の孫なのだから喜んで世話をしてくれているのだとばかり思っていました。でも、ある日、「もうこれ以上は協力できない」とこれまで子どもの世話が実はとても負担になっていたということを親から切り出されてショックでした。孫に怪我をさせないよう、食事の世話なども実家の親ならでは気を遣っていたようです。親だからと甘えていた自分を振り返って反省するばかりでした。それからはベビーシッターさんと契約して、コストはかかるけれど、親に負担をかけている、という後ろめたさはなくなり、働いている間、私の気持ちもずいぶん楽になりました。

自分の時間の大切さに気づきました。
Fさん

 保育園を利用して毎日の仕事と育児だけで精いっぱい。夕方のカンファレンスや土日の学会まで時間を費やして子どもといる時間を減らしたくない、と思いミーティングはほとんどパスしていました。同窓会や勉強会などもつい足が遠のいて、気がついたら家と職場、保育園の3点を行き来するだけの単調な生活になっていました。学会の託児室もあるけれどそこまで連れて行くのも大変だと思うと何となく利用する気にならなくて・・・休日も夫は学会に出かけていくのに、自分はたまった家事をしたり、子どもを外に遊びに連れて行ったりで、自分の時間がないのが悩みでした。
 実は母親として子どもの世話をしないで出かけることに後ろめたい気持ちを持っていたせい、ということに最近やっと気がつきました。それからはシッターさんに来てもらって子どもの世話をお願いし、土日の学会にも行って勉強できるようになりました。次回は自分が発表できるようになりたいです。

本の紹介です。
Gさん

 育児に対する後ろめたさ、と言えばちょっと前のものなのですがお勧めの本があります。
 お仕事してても子は育つ 働くママの「後ろめたい症候群」 (新潮社.2004 )
 M.C.ヒッキー.サルマンズ (著), 柴門 ふみ (訳) です。
 アマゾンの書評に、「ワーキングマザーの負い目を逆手にとって、楽しく笑い飛ばせる本。でも、実際に小さい子を持つワーキングマザーだったら本を読んでいる暇などないはず。この本が本当に必要な人ではなく、子育てのピークが過ぎた元ワーキングマザーしか読まないのではないかと心配。」というコメントがありましたが、気持ちが追い詰められたときなど、ちょっとしたストレス解消になるかも。本だけでなく、子育て関連のサイトをいろいろのぞいてみると同じような悩みをもっている人が意外に多く、自分だけではない、と思うだけで安心できます。

HさんとY医局長の往復書簡

Hさん:
 G病院の外勤のお話ですが、義母に子どもをみてもらえそうなので 来月から週1回伺います。大学勤務は5月頃から週2回行けそうです。
Y医局長:
 G病院も医局も大変助かります。お子さん、可愛くて離れがたいでしょうが、24時間べったりだとそれも大変かもしれません。無理がかからないよう、バランスをとってください。
Hさん:
 医局の他の先生はこれまでどんな形で復帰されたのでしょう? Y先生 もお子さんがおられますが、どうされていたのか教えてください。
Y医局長:
 家庭環境やお子さんの状況によって、復帰時期はケースバイ ケースです。私自身の場合は、家にいるのに耐えられず育休を切り上げて 週3日程度の勤務から復帰しました。しかしフル復帰してからは大変でした。 重症の受け持ちや当直もあり、きつかったです。外勤当直と日曜当直を免除 される程度でも、ありがたいと思え、という雰囲気でした。子どもが保育園で風邪をもらって月の半分くらいは園を休んだり早退したりで、ベビーシッターさんに何度も来てもらうことで費用もかかりました。おまけに私も子供の風邪をもらって体調不良で・・・家へ帰っても夜泣きで眠れずへとへとでした。何度も辞めようかと思いました。だからH先生には私のように無理しすぎないように息の長い働き方をしてほしいです。
Hさん:
 頑張ってみます。またいろいろ相談させてください。

IさんとK医局長の往復書簡

K医局長:
 いつ頃から医局に戻れそうですか?
Iさん:
 子どもが1歳になったら、保育園に預けて復帰する予定です。入園後は実家の近くに親子3人で住み、私の両親の援助を受けようかと 思っています。でも保育園のお迎えに行くため週に何日かは早く帰らなければいけません。それに私がいないと子どもが寝ないので、一人寝ができるまでは お迎えが無い日でも、早く帰らなければなりません。当直もしばらくは無理そうです。外来だけならできそうなのですが・・・。  私は仕事のスピードが遅いので、時間制限があるなかで病棟受け持ちを責任を持って行うのはあまり自信がありません。時間制限がある中で要領よく仕事をこなす先生もいらっしゃいますが・・・やはり他の先生方との兼ね合い、特に当直をする先生方の大変さを考えると、自分の家庭の都合ばかり通せるものではないと思います。それでもできるだけ皆さんのお役に立てるよう、家族とも相談して復帰できるようにしますのでよろしくお願いいたします。
K医局長:
 すぐには何でもやろうとしないでいいのです。まずはできるところから トライして少しずつ自信をつけてください。医局の他の若手女性医師たちもI先生が復帰できるか見守っていますよ。だからあきらめないで。みんなでI先生を応援して います。

子どもは親が思っているより“たくましい”
Jさん

 夜間の業務については、当直より待機の方が自宅で休めるぶん、体力を温存できます。私は月に数回の待機から慣らしていきました。けれでも、待機は夕方から朝までいつ呼ばれるかわかりません。だからいつ家を出ても大丈夫なように、その時間帯を完全にサポート(肩代わり)してくれる人が必要です。特に「ママがいないと子どもが寝ない」という場合には、小さいうちから、意識して夫や身内、シッターさんなどに預けることによって慣らしていくようトレーニングするといいでしょう。  また、保育園に通いはじめのうちは、家を出るときや園の玄関で、「ほいくえん行きたくない〜、パパママ行かないで〜」など泣き叫ぶので親としては後ろ髪を引かれる思いがするでしょう。しかし、子どもはけっこうたくましいもので、しばらくするとケロッとして遊び始めます。そんなに気にしなくてもよかったかな、と慣れてきた頃になって思いました。