■「イクボス」の役割 日本産科婦人科学会で2016年4月に「イクボス」というテーマでシンポジウムが開催されました。男女を問わず,キャリアアップには管理職,指導医の役割がきわめて重要です。「イクボス」には「部下の目線でキャリア形成と私生活を応援」しつつ,「モチベーションを向上させてキャリアアップを促進」していくことが求められます。個々のスタッフの能力や環境に応じて,業務をどう配分して組織全体のパワーを挙げていくか,管理職には今後ますますマネジメント力が必要になってきます。 ■キャリアアップのための次なるステップ
産休・育休や保育所設置,短時間正職員,時短勤務,当直免除などの制度によって、辞めずに職場復帰ができる制度が次第に整備されてきました。 ■女性活躍先進企業に学ぶ
化粧品メーカーの資生堂は、女性社員が多く、さまざまな施策を先駆けて導入し、女性リーダー比率も上がるなど成果を出しており、女性活躍においてまさに日本のトップ企業であります。その資生堂が子育て中の社員にも時間外や休日勤務を要請することを打ち出し、大きな反響を呼びました。 ■当直や休日日勤について
資生堂の事例は医師の場合なら当直や休日日勤によって業務をトリアージしながら、救急患者に対応する能力が磨かれていくことにたとえられるかもしれません。働き続けるために当直免除が欠かせない時期や場合もあるかもしれませんが,いつまでも完全免除でよいのか,立ち止まって考えることもあってよいのではないでしょうか。家族と相談してもし調整できそうならまずは月に1回からでもトライしてみるとよいかもしれません。 |
Aさん
二人の子どもがいるので出産後は当直免除の条件で勤務しています。「時間になったら帰れるからいいよね」と嫌味を言われることもあり,辛い思いをしたこともあります。下の子が1歳になったので当直するよういわれましたが,勤務の前後の家事や育児の負担も増したため,体力が続かなくなり退職しました。今は別の病院に異動しましたが,そこでは当直明けは昼で帰ることができるので,月2回は当直しています。当直明けは溜まった家事をし,子どもを早めにお迎えにいってゆっくり触れ合うことができます。
Bさん
人手が足りないので当直してほしい,といわれたときはとても無理と思いましたが,月1回でよいから,といわれやむなく夫を説得して当直することにしました。当直の日は帰りの時間に追われることもなく,お産の合間に日頃たまっていた仕事を片付けたり,学術雑誌に目を通したりして,久しぶりに出産前の気分に戻ることができました。昼間より少ない人数でお産や帝王切開に対応したのでドキドキでしたが,働きがいがありました。当直明けにはまた外来もあるので疲れますが,月1回か2回程度ならやってもいいかな,と自信になったかもしれません。