［３］学術研修部

　近年、医学が急速に進歩する一方で、医療を取り巻く環境も大きく変化している。産婦人科領域では、少子高齢化など社会構造の変化に伴い医療を受ける側にも大きな変化がみられ、それに伴い医療内容も変化してきた。分娩介助の機会が減少する一方で、高齢女性に対する医療需要の増加、若年者の性感染症の蔓延、生殖医療への需要の増大、内視鏡下手術等新しい医療技術の進歩、尿失禁等学際的医療の拡がり等がみられる。他方、医療に対する社会の意識にも変革がみられ、より高度でより質の高い医療が求められるようになった。患者が医療情報を分析・評価し、質的に高い医療機関を選択したり、セカンドオピニオンを求めることが当然のこととされるようになってきた。このような社会変革に伴い、医事紛争も増加している。　
　このような状況に鑑み、日本産婦人科医会学術研修部は、会員の知識の向上や技術の修得に役立つような生きた情報を提示する必要がある。実地医療に役立つようなminimum requirementを提示するとともに、最新医療にも遅れをとらないよう質の高い医療情報を提供していきたい。
　以上の方針により、平成15年度の研修テーマとして、昨年度から始まっている「感染症シリーズ」の「感染とパートナーシップ」に引き続き「妊娠と感染症」、および新たな医療技術としての手術法を提示すべく「内視鏡下手術」を取り上げた。さらに、即時性を重視したテーマを委員会で選定して研修ニュースの発行を適宜行う。また、一昨年度から新たな21世紀の研修スタイルの取り組みとして行っている動画を含んだ画像情報と研修ノートの概要をマニュアル化したものを収録したCD-ROMを作成し、研修ノートと共に全会員に配布する。さらに、可能な限りデジタル化を図り、21世紀の効果的な会員研修方法、研修スタイルについて模索・検討を重ねながら、以下の事業を行う。

１．研修資料の作成

(1) 平成15年度研修テーマ

　平成15年度の研修テーマについて、研修ノート、研修用スライド、CD-ROMを作成する。研修ノートと共にCD-ROMを全会員に配布する。研修用スライドと保存用CD-ROMは本部で保管する。

平成15年度
研修テーマ	研修ノート	執筆担当者
妊娠と感染症	No.70	分担執筆（11名）
内視鏡下手術	No.71	分担執筆（12名）

(2) 平成16年度研修テーマ

昨年度選定された平成16年度の研修テーマについて、研修ノート、研修スライド、CD-ROM作成の準備を行う。

平成16年度
研修テーマ	研修ノート	執筆担当者
「感染症」シリーズ 　婦人科感染症とリスクマネジメント	No.72	未定
「婦人科外来診療」シリーズ 　不正性器出血	No.73	未定

２．平成17年度研修テーマの選定

　生涯研修の要である平成17年度の研修目標を定めて、それに沿ったテーマを選定する。

　

３．生涯研修機会の充実に関する検討

　研修の内容、会員のニーズ、研修の利便性（参加や研修のしやすさ）を生涯研修における３要素と意義づけ、たえず念頭において検討を重ねている。昨年度と同様に、今年度も「研修スタイル」に焦点をあてて新たなる研修方策として会員研修テーマのビジュアル化、また資料のデジタル化を行う。

４．生涯教育のための資料作成とその協力

　日本産婦人科医会学術集会や生涯研修会等のビデオ等の研修資料作成に企画・協力し、会員の効率的な生涯研修に資する。

５．日産婦学会との連絡・協調

　「日産婦学会・医会ワーキンググループ」内に設置されている両会の生涯研修担当者からなるワーキンググループの場を活用し、調和のとれた生涯研修のあり方に関する総合的・実際的な協議を行い、学会と医会との協調した研修体制の整備に努める。

６．学術研修情報の提供

(1) 「研修ニュース」の発刊

　昨今の医療状況を鑑みるに、医事紛争に関わる問題などに対し、早急に対応しなければならないことが多い。研修ノートではup-to-dateな問題には即応しきれないため、本年度も「研修ニュース」を適宜継続発行する。

(2) 日産婦医会報「学術」欄への対応

　会員への有益かつ系統的な学術研修情報の提供をはかる観点から、当部にて企画・検討した学術研修情報を、広報部はじめ関連各部の協力を得て、日産婦医会報「学術」欄に掲載する。

(3) 「小冊子」の監修・委託・発行

　会員の診療に役立つよう、また患者指導用に、患者向けに研修ノートを手直しした小冊子の監修を行うとともに、委託、発刊する。

７．刊行物のデジタル化

　学術研修部の刊行物としては研修ノート、研修ニュース、日産婦医会報学術欄等があるが、将来を見据えてこれらをデジタル化し保存している。本年度も、研修ノート、研修ニュースのデジタル化保存を継続する。さらに、情報システム部の協力を得ながら、日本産婦人科医会ホームページへの掲載、会員への配布やその方法についても検討していく。

８．委員会

　上記事業を達成するため、引き続き研修委員会を存置する。