平成15年度 事業計画

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[9]女性保健部
 
 産婦人科医が女性の疾病や出産を扱うことはいうまでもない。一方、女性の一生をみつめ、その間に起きる様々な心身の生理的変化が正常範囲を逸脱して病的な変化となっていくことを予防したり、あるいはこれらを早期に発見して対応するのも、女性保健の一翼を担う産婦人科専門医の重要な仕事である。
 女性保健部は女性の生涯医療という観点から、女性の各ライフステージを思春期、成熟期、更年期、老年期に分け、がんと周産期を除くそれぞれの時期に特有な問題について、情報を収集し検討を加え、会員の日常診療に役立つ小冊子の作成や会員への働きかけ、社会への啓発事業を行っている。これらを遂行するため、本年も以下の事業を行う。

1.思春期

 「健やか親子21」と連携のもと、この時期に散在する諸問題を、社会的支援策と会員への啓発策等の視点を加味して検討する。
(1) 第26回性教育指導セミナーの開催(開催担当:本部)
 本年度の性教育指導セミナーは本部主催とし、性教育をこれから始めようとしている会員から、さらに性教育のスキルアップを目指している会員も視野に入れ、分科会等を取り入れた方式で行う。これはいわば「性教育指導者講習会」ともいえるものであり、平成15年7月6日(日)全共連ビルにて開催する。
 また、本セミナーの「集録」を作成し、参考資料として各支部に配付する。
(2) 第27回性教育指導セミナー開催協力(開催担当:秋田県支部)
 平成16年度の性教育指導セミナー開催に向け、担当支部と協力し準備する。
(3) 性教育指導セミナーのあり方検討
 新たな手法による第26回セミナーの開催結果を踏まえて、今後のあり方を展望する。
(4) 学校医・学校協力医へのアプローチの推進
 産婦人科医が性教育に関連する分野に参画できるよう、関係当局への働きかけを継続して行う。また、「学校における性教育の実態調査結果」(平成15年1月刊)の活用も図る。
(5) 思春期外来の診療マニュアル(モデル)作成の検討
 前年度に引き続き、外来診療に活かせる資料形態によるマニュアルの作成を目指して検討する。

2.性成熟期

 本年度は、この時期における女性保健の状況把握とその向上策、ならびに会員の現状を踏まえた上で、実際に会員が実施できる新規分野の開拓に努める。
(1) 女性専門外来の実態調査
 現在様々な施設で「女性専門外来」が実施されている。しかしながらこれらにおいては、相談か治療か、あるいは担当医師の専門性等、各施設の名称のみでは実態がどのようなものかはまったく不明である。そこで、「女性専門外来」の実態把握のために各支部の協力を得て調査を行い、今後の女性保健医療の検討に資する。
(2) 月経のトラブル等に関する新規小冊子の作成
 患者と医師のコミュニケーションに役立つよう、月経のトラブルを取り上げた小冊子を発行する他、新規分野の開拓も検討する。なお、月経に関するトラブルは思春期の分野にも共通するものである。
(3) 低用量OC
 本会監修のホームページ「Female-Health カラダの中から美しく!」の活用と普及を一層図ると共に、OC以外の女性保健分野もホームページに載せる。
低用量OCによる月経困難症、あるいは子宮内膜症に対する効果について、アンケート調査を行う。
(4) 不妊
 不妊症診療におけるprimary consultationの実施に向けた会員支援、ならびに不妊専門相談センターの全国における開設動向の把握を継続して実施する。
(5) STD
 HIV等のSTDに関する国内の状況把握と、最新情報の会員への伝達を継続して実施する。

3.更年期

 前年度発刊の「こうすればよくなる排尿のトラブルや性交痛の悩み」に続く小冊子も視野に入れて、本年度は以下の事業を取り上げる。
(1) より快適な過ごし方に向けた支援策の模索
 予防医学の観点から、健常者を対象とした分野の開拓を模索する。
(2) 「中高年女性のヘルスケアーマニュアル」(仮称)作成の検討
 HRT、高脂血症、高血圧、肥満、糖尿病等における中高年女性への診療時に、会員の利用を考慮した簡便なマニュアル作成を今年度も検討する

4.老年期(介護に関する活動)

 介護保険料の見直し(平成15年)や、介護保険制度自体の見直し(平成17年)等についても情報収集に努め、以下の事業にて対応を図る。
(1) 要介護女性の疾病に関する実態調査
 前年度に作成した調査表を基に、介護保健施設を対象とした実態調査を各支部の協力を得て実施するとともに、入所者の婦人科疾患の実態を把握し、結果を会員へ医会報等を通じて伝達する。さらに調査結果を後述のマニュアル作成に反映させる。同時にこの結果を踏まえて、今後産婦人科医がどのように介護に関与していったらよいか方策を探る。
(2) 「産婦人科医のための介護保険マニュアル」(仮称)作成の検討
 「介護に関するアンケート調査結果」(平成14月12月刊)や研修ノートNo.63「高齢女性のケア」(平成11年12月刊)等から、産婦人科医にとって必要な介護保険に関する知識を集約したマニュアルを検討し、作成すべきとの結論に至った場合は、出来るだけ早急に作成する。
 この過程で、会員の生涯研修資料となり得ると思われる場合は、検討結果をとりまとめて、研修テーマやノート選定等の資料として学術研修部に提供する。
(3) 介護保険の動向把握と情報提供
 介護保険の動向(行政や介護保健施設等)に注視し、情報の会員への伝達を図る。

5.「全国支部女性保健担当者連絡会」開催の準備

 前年度に実施した「女性保健と介護に関する検討会」を踏まえ、平成16年度「全国支部女性保健担当者連絡会」開催の必要性を検討する。

6.性的暴力(DV)への対応

 性的暴力(DV)の社会での実態の把握に努めると共に、国や自治体における対策(マニュアル作成等)やその他会員にとって必要な情報を逐次医会報やインターネット等を通じて提供する。
 

7.女性保健(産婦人科医療)の一般社会への働きかけ

 女性のprimary careを担当する専門医の立場から、適切な医学的知識に基づく患者や社会へのアピール活動を通じて、一般社会の産婦人科医療への理解を深める。また、当部既刊刊行物(小冊子5種、性教育講演用スライドや前述調査結果等)を利用して、さらなる女性保健医療の向上を図る。
(1) ホルモン剤に関する啓発
 ホルモン剤(OCやHRT)へのより適正な社会的理解を深めるため、製薬会社等との協調も含めた啓発事業(ポスター、ビデオ、インターネット等を利用)を継続して行う。特に医会ホームページを積極的に活用する。
(2) 女性保健向上のための公開講座等への支援と周知
 産婦人科医の専門性を社会に還元する一環として、学会と合同で行っている公開講座や関連セミナー、フォーラム等への支援を図り、有用情報の収集とその周知に努める。

8.関連諸団体との連絡提携

 厚生労働省、文部科学省、日本医師会、日本産科婦人科学会、その他関連諸団体との連絡を密にし、円滑な事業推進に資する。

9.委員会

 以上の事業を遂行するために、女性保健委員会を設置する。

 

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