〔青色は新規事業〕
産婦人科領域の医療内容は、医療の進歩とともに変遷して来たが、ここ数年は特に少子高齢化などの社会構造の変化による影響を大きく受けつつある。年間出生数が120万人を下回る状況において、分娩を取り扱う施設の減少と産婦人科を専門とする医師の減少は、産科医が周産期医療にどのように携わっていくのかを考えさせる現象である。また、クラミジアをはじめとした性感染症の蔓延は、婦人科医が性教育へ積極的に関与する必要性を示唆し、産婦人科医は母子感染や次世代への影響を考えた医療を提示していく責任をより重く問われる時代となった。高齢化社会は、高齢女性に対するQOLを考えた医療や女性の生涯にわたるかかりつけ医としての役割を、われわれ産婦人科医に求めている。
他方、患者は、産婦人科医師に対してより高度でより質の高い医療の提供を求めるようになってきた。患者が医療情報を分析・評価し、質の高い医療機関を選択することや、セカンドオピニオンを求めることは当然のこととされる時代が到来した。一方で、患者の医療に対する期待水準の高まりは、医療情報の氾濫や医事紛争の増加に繋がり、社会問題にも発展しつつある。
このような状況に鑑み、日本産婦人科医会学術研修部は、会員の知識の向上や技術の修得に役立つ生きた情報を提供する必要性をこれまで以上に強く感じている。従来の様に実地医療のminimum
requirementを提示するのみでなく、最新医療にも遅れをとらないよう、より高度な医療情報も併せて提供していきたいと考えている。
平成17年度の研修テーマは、本年度からスタートする「産科外来シリーズ」の最初として「妊娠初期の超音波検査」を取り上げた。超音波検査は産婦人科において必須の検査であり、minimum
requirementとしての知識とより高度な情報とに分けて編纂する。また、昨年度から始まっている「婦人科外来診療シリーズ」としては、「痛みの診断と治療」を取り上げた。婦人科外来において、診療に迷った際に参考となるような研修ノートの作成を目指している。その他、即時性を重視したテーマの研修ニュースの発行を適宜行う。また、動画を含んだ画像情報と研修ノートの概要をマニュアル化し、それを収録したCD-ROMを作成して、研修ノートとともに全会員に配布する。
さらに、資料は可能な限りデジタル化を図り、それを効果的で簡単に利用できるような研修方法、研修スタイルについても検討を進める。
平成17年度は以下の事業を行う。
１．研修資料の作成
- （１）平成17年度研修テーマ
- 平成17年度の研修テーマ（下記1)〜2)）について、研修ノート、CD-ROMを作成する。
研修ノートとともにCD-ROMを全会員に配布する。保存用CD-ROMは本部で保管する。
１）「妊娠初期の超音波検査」（研修ノートNo.74）
執筆者：分担執筆（8名）
２）「痛みの診断と治療」（研修ノートNo.75）
執筆者：分担執筆 - （２）平成18年度研修テーマ
- 昨年度選定された平成18年度の研修テーマ（下記1)〜2)）について、研修ノート、CD-ROM作成の準備を行う。
１）「産科外来」シリーズ「妊娠中・後期の超音波検査」（No.76）
執筆者：未定
２）「婦人科外来診療」シリーズ「婦人科における東洋医学」（No.77）
執筆者：未定
２．平成19年度研修テーマの選定
- 平成19年度の研修目標を定めて、それに沿ったテーマを選定する。
３．生涯研修機会の充実に関する検討
- 会員のニーズ、研修の内容、研修の利便性（参加や研修のしやすさ）を生涯研修における３要素と意義づけ、それを念頭において研修の充実を図りたい。昨年度と同様に、本年度も「研修スタイル」に焦点をあて、新たな研修方法の素材、研修資料のビジュアル化、また資料のデジタル化を行う。
４．生涯教育のための資料作成とその協力
- 日本産婦人科医会学術集会や生涯研修会でビデオ等の研修資料作成・企画に協力し、会員の効率的な生涯研修に資する。
５．日本産科婦人科学会との連携・協調
- 「日産婦学会・医会ワーキンググループ」の会議にて、調和のとれた生涯研修のあり方に関する総合的かつ実際的な協議を行い、学会と協調した研修体制の整備に努める。
６．学術研修情報の提供
- （１）「研修ニュース」の発刊
- 昨今の医療状況の変化は早く、特に医事紛争にかかわる問題などは早急に対応しなければならないことが多い。研修ノートではup-to-dateな問題には即応しきれないため、本年度も「研修ニュース」を適宜発行し、重要な新しい情報の提供や必要事項の周知などを行う。
- （２）日産婦医会報「学術」欄への協力
- 会員へ時宜を得た新しい学術情報の提供を図る観点から、当部にて企画・検討した学術研修情報を、広報部はじめ関連各部の協力を得て、日産婦医会報「学術」欄に掲載する。
- （３）「小冊子」の監修・委託・発行
- 日常の診療現場で役立つよう、研修ノートの内容などを患者向けに手直しした小冊子の監修を行うとともに、委託、発刊する。
７．刊行物のデジタル化
- 学術研修部の刊行物としては研修ノート、研修ニュース、日産婦医会報学術欄等があり、将来を見据えてこれらをデジタル化し保存している。本年度も、研修ノート、研修ニュースのデジタル化保存を継続する。さらに、情報システム部の協力を得ながら、医会ホームページへの掲載、会員への配布及びその方法についても検討する。
８．委員会
- 上記事業を達成するため、引き続き研修委員会を存置する。
