[6]勤務医部
勤務医の雇用環境(賃金体制、過酷な勤務など)は改善の傾向がないままに臨床研修医制度が開始した。これにより医師の異動などによる勤務医の集中・過疎化という現象が発生し、産婦人科の診療実態にも変化が発生している。これらは産婦人科医師数の減少に起因するところが少なくない。
平成16年度の専門医認定試験合格者数は平成15年度より25名減少して271名となり、医師数問題がさらに深刻となってきている。最近女性医師の比率は男性医師を上回っているが、その数にも減少傾向がうかがわれる。
臨床研修指定病院では本年度から産婦人科の研修が開始する。従来産婦人科専攻を決めた医師が大学病院など医育機関の産婦人科で研修を開始していたのと異なり、診療科をローテートする中ですべての研修医が産婦人科の診療に携わることになる。このような状況では直接研修医師に接する勤務医が、産婦人科はいかに魅力ある診療科であるかなどを示し理解を得ることが産婦人科医師の増加のためにも必要である。
このためにも産婦人科勤務医が抱えている周辺環境と現場の診療環境を整備・改善する必要がある。さらに日本産婦人科医会では研修医に直接接する若手勤務医への働きかけも積極的に行うとともに、これまでも行ってきた日常診療に役立つ診療情報の提供、勤務医・開業医を問わずそれぞれが現在抱える問題点の抽出と解決策の提言、将来展望の提示、若手医師増加対策の提示などの活動をさらに推し進める計画である。
勤務医部としては、産婦人科専攻医師の増加対策を重要課題とし、産婦人科医師全体が共通認識の基に行動できるように情報発信し、産婦人科医会各支部の勤務医担当者との連携をとりつつ、すべての産婦人科医の職場環境の改善、ひいてはQOL向上に寄与するように活動する。
1.「JAOG Information」の発行
- 勤務医の抱えている問題点、将来展望などについて広報し、勤務医からの投稿原稿を掲載するとともに、会員の日常診療に役立つ医療情報の提供を行う。
本年度も、日本産婦人科医会学術集会・近畿ブロック大会(滋賀)抄録集を含め計3回の発刊を予定している。
2.勤務医の待遇に関する検討
- 過年度に実施のアンケート調査結果(女性医師の復職に関する問題、定年後再就職に関する問題)による提言の広報活動と成果について再検討を行い、支部担当者を経由した活動を検討する。
潜在医師の有効活用を目的とした情報提供の手段を検討する。現役と定年後、勤務医と開業医、男性と女性等を問わず労働上の情報を提供することにより人手不足解消の一助としたい。当面の方法としては医療対策部・情報システム部の協力を得て医会ホームページ上の掲示板設置を検討する。
3.女性医師の有する諸問題の検討
- 女性医師が産婦人科医として活躍できる体制を構築することが、女性医師比率の上昇とともにますます重要となっている。
- (1)各支部における女性医師の現状などについて情報収集を行い、対応策を検討
- (2)女性医師に関する各病院医局内規(妊娠・分娩・育児等について)や、それに対する男性医師の係わりなどを調査し、問題点の抽出と対応について検討
4. 産婦人科専攻医師増加のための検討
- 卒後臨床研修制度の開始後、医師の偏在問題が顕著化し、研修病院における医師の労働負担が非常に大きくなってきている。本年度から産婦人科へのローテートが始まることを受けて、各支部勤務医担当者との連携を強化する。各都道府県における卒後臨床研修指定病院の確認を行い、研修指定病院の現状調査、指導医については卒後研修開始後の労働条件や環境における問題点(変化)を調査する。各卒後臨床研修指定病院指導医から、医学生や研修医向けのアドバイス、産婦人科専攻医師増加対策、後期研修医募集要項などの情報を収集する。
これら情報の分析と問題解決のための提言も検討する。
5.日本産婦人科医会学術集会開催ブロック勤務医担当者座談会
- 本年度で7回目となる勤務医担当者座談会を日本産婦人科医会学術集会時に開催する。本年度は滋賀県で、近畿ブロック勤務医担当者を対象とする。座談会の内容、結果についてはJAOG
Informationで報告する。
6.日本産科婦人科学会学術講演会会場での医会広報活動コーナー設置への協力
- 平成17年4月に開催される日本産科婦人科学会会場に設置予定の医会広報活動コーナーに、勤務医部として参加協力する。
7.医会ホームページ勤務医部コーナーの充実
- (1)平成16年度までに行った調査提言等の掲載
(2)勤務医の生活に関する情報提供コーナーの設置
- 勤務医自身及び家族の将来に対する保障等は自分自身で熟考しなければならない時代である。しかし、今までこの領域に関する情報提供は皆無に近い。そこで、ファイナンシャルプランナー(ライフプランナー)などの協力を仰ぎ情報を掲載する。
8.委員会
- 勤務医部の活動のため以下の委員会を存置する。
勤務医委員会
必要に応じて小委員会の設置も考慮する。
勤務医の待遇のための小委員会
産婦人科女性医師のための小委員会
産婦人科専攻医師増加のための小委員会
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