[9]女性保健部
女性保健部では、周産期とがん(母子保健、先天異常、がん対策の各部が担当)を除く女性特有の疾患とその予防を、女性の一生を通じての生涯医療と捉えて、女性としての尊厳性を確保し社会がその尊重を図る上で、産婦人科の専門性を活かすことを課題としている。
女性は女性特有の疾患を有するのみならず疾患近縁の問題をも有しており、かつ底辺が広く各年代にわたって存在している。そこで、女性保健部では、女性のライフステージを思春期、性成熟期、更年期、老年期とに分け、情報収集と検討を通じて、会員には日常診療に役立つ有用な情報を、社会には産婦人科医療への理解に役立つ情報を提供することを活動方針に、随時up-to-dateなテーマを選んでアプローチしている。女性にとって、各ステージにおける心身の生理的変化が、その範囲を逸脱して疾患の誘因とならないように予防すべきであり、最近では社会的な側面も今後の女性保健に影響を及ぼす可能性が高いことから、本年度は以下の事業を行う。
1.思春期
- 「健やか親子21」とも連携し、思春期における諸問題への支援策と啓発策を検討する。
- (1)第28回性教育指導セミナー全国大会の開催(開催担当:福岡県支部)
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本年度は、福岡県支部担当のもと「性の実態と性教育の可能性—この危機的状況をどう取り組むか−」をメインテーマに、九州地区を対象とした若年出産の背景と今後の取り組みや、さらにはHIV感染症と性教育について泌尿器科医を交えたシンポジウムが開催される。そこで、本部としても当該セミナーを支援する。
- 開催日程:平成17年7月10日(日)・九州大学医学部「百年講堂」
また、本セミナーの「集録」を例年どおり作成し、各支部に配付する。
- (2)第29回性教育指導セミナー全国大会の開催協力(開催担当:未定)
- 平成18年度の「性教育指導セミナー全国大会」開催担当支部を公募するとともに、決定された支部への協力と支援を図る。
- (3)“性教育指導セミナー”のあり方検討
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第29回(平成18年度)以降の開催地選定や、セミナーの内容や開催方法等の検討を随時行い、平成15年度発刊の「第26回セミナーアンケート結果」を活用しつつ、医会会員は無論社会にとっても有益なセミナーのあり方を検討する。
- (4)学校医・学校協力医へのアプローチの推進
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文部科学省が平成16年度より開始した「学校・地域保健連携推進事業」に関しては、各支部における当該事業の内容、進み具合等を本年度も調査するとともに、必要あれば各支部に協力する。また、前年度にまとめた平成16年度「学校・地域保健連携推進事業」参画に関する状況調査結果(平成16年11月刊)の活用も図る。
- (5)性教育スライドの改定
- 平成13年度に本女性保健部が作成した性教育用スライドのデータ等を最新のものとする。
2.性成熟期
- 本年度は、この時期の女性が陥りがちな問題点に焦点をあてて、その社会的な啓発策をメインにして動向把握と検討を通じて、女性保健の充実を図る。
- (1)性感染症予防対策
- HIV等のSTDに関する内外の状況把握や最新情報の会員への伝達はもとより、本年度はこの時期の女性への啓発策も考慮に入れた予防対策の検討を継続する。
- (2)低用量OC
- 後述のホームページを通じて、正しい医学情報による低用量OCへの啓発と、月経困難症や子宮内膜症に対する効果等の動向把握を継続して行う。
- (3)不妊
- 不妊症診療におけるprimary consultationの実施に向けた会員支援、並びに不妊専門相談センターの全国における開設動向の把握を継続する。
- (4)ホームページ「Female Health カラダの中から美しく!」の継続
- 本会監修のホームページ「Female Health
カラダの中から美しく!」を継続し、社会的な啓発と閲覧者よりの投稿欄等で女性保健全般にわたる動向把握にも活用する。
3.更年期
- 本年度は、健常者への支援策、女性専門外来、生活習慣病をメインに以下の事業を行う。
- (1)女性専門外来のあり方の検討
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前年度実施した「女性専用外来実態調査」アンケート調査結果から、女性専用外来で扱う疾患としては更年期障害が最も多く、次いでその他の婦人科疾患、心身症、精神科疾患であった。一方、担当医は内科系医師が最も多く、婦人科医との連携や婦人科領域に関する知識を必要としていることが明らかとなった。そこで、女性専用外来のあるべき姿を模索しつつ、女性患者のニーズにあった外来への提言を行っていく。
- (2)中高年女性のヘルスケアー編「生活習慣病マニュアル」(仮称)作成
- HRT、高脂血症、高血圧、肥満、糖尿病など、中高年女性のヘルスケアーに役立つ簡便なマニュアルとして、生活習慣病を取り上げた小冊子を作成し、会員の利用に供する。なお、新たに取り上げるテーマも随時検討し、マニュアル化に向けて準備する。
- (3)最近の知見を踏まえたHRTの指針の策定
- WHIやMillion Women
Study等の結果より、HRTに関する考え方が世界中で変化してきている。そこで、その後の日本の成績を踏まえ、日本人女性におけるHRTに関する医会の指針を提示する。
4.老年期(介護に関する活動)
- 平成18年度の介護保険制度自体の見直しを視野に入れて、以下の事業にて対応を図る。
- (1)冊子「産婦人科医のための介護保険入門」の活用
- 前年度作成した冊子「産婦人科医のための介護保険入門」の活用策を検討する。
- (2)介護保険の動向把握と情報提供
- 平成18年度に予定されている介護保険制度の見直しを含めた介護保険の動向把握(行政や介護保健施設等)に努め、随時会員にとって有用な情報の提供を図る。
5.小冊子の作成
- 会員と患者との連絡用に作成してきた小冊子を本年度も作成する。テーマは「更年期のトラブルにさようなら」(仮題)とする。
6.「全国支部女性保健担当者連絡会」開催の準備
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平成14年度の「女性保健と介護に関する検討会」を通じて、全国的な担当者連絡会開催の要望が極めて強かった。そこで、その後全国的な担当者連絡会の開催の是非や時期等を検討してきたが、平成18年度以降の介護保険制度の見直し結果を踏まえて開催する方向で検討している。本年度はその準備期間として検討を継続する。
7.女性保健(産婦人科医療)の一般社会への働きかけ
- 我々産婦人科医が女性のprimary
careを担う専門医として、一般女性から産婦人科医療への理解が深まるよう社会にアピールし、適切な医学的知識の啓発に努める。
- (1)ホルモン剤(OCやHRT)や性感染症等に関する啓発
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関連団体、企業(製薬・メディア他)等と協調し、ホルモン剤への正しい理解を図る。また、上記、思春期、性成熟期、更年期にも述べたように、性感染症や緊急避妊法など、一般女性が知っておくべき事項等についても、female
healthに関するホームページをはじめ可能な限りの手段を用いて啓発する。
- (2)女性保健向上のための公開講座等への支援と活用
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女性保健の向上には、正しい医学情報の社会への還元が不可欠なため、産婦人科医療への適正な理解を得る上で、学会と合同で行う公開講座等への支援とその活用を図る。
8.関連諸団体との連絡提携
- 関係省庁や日本医師会、日本産科婦人科学会等と連絡し、円滑な事業推進に資する。
9.委員会
- 以上の事業を遂行するために、女性保健委員会を存置する。
また、委員会内に3つの小委員会(思春期・性成熟期、更年期、介護保険)を置く。
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